061 『スクールカーテン』インタビュー①
ベース(以下 B) ピエピエ……ようこそ、悪党の
とりあえず、このバンドのボーカルから、ひとつ忠告があるピエ。
ボーカル(以下 Vo) どうも。わたし、ボーカルです。
そして、わたしは周囲から『窃盗犯的なイメージがある人物』と言われています。
だからお兄さんは、インタビュー中に財布を盗まれないよう注意してください。
B ふははははっ、ピエピエピエピエっ! もう一度言っておくピエ。ここは悪党の巣窟。
Vo そしてわたしは、どうやら
B ピエ。だから、お兄さん。インタビュー中も気を抜かない方がいいピエよ、ピエピエ。
――(インタビュアー) つまり、私はインタビュー中に、ボーカルの方から財布を盗まれる可能性があるってことですか?
Vo うん。そして、わたしたちがこの部屋の中にいる間、ここは治外法権ってことにしてもらえますか?
B ピエピエ、治外法権ピエ。だから財布を盗まれたとしても、この国のおまわりさんや司法は1ミリだって動いちゃくれないピエ? ふははははっ、ピエピエ。
―― ご忠告ありがとうございます。
あと治外法権の件、かしこまりました。
Vo&B ありがとうございます!
―― ですが……あのぉ、大変言い出し辛いのですが……。
私が今、財布を身につけていない……と言い出したらどうなります?
Vo そうなんだ。じゃあ、窃盗犯キャラのわたしの出番は、これでほとんど終わりになるのかな?
―― ボーカルの方の出番は、もう終わりなんですか? それはまたどうして?
B ピエピエ。俺様たちが事前に用意していたシナリオが、崩れてしまったピエからな。
―― シナリオが崩れる?
B ピエ。実はうちのバンドのボーカルが、インタビュー中にインタビュアーの財布を
Vo うん。それで、窃盗犯的なイメージのあるわたしが、インタビュアーの財布を盗む役だったんだよ。
B ピエ。もちろん、うちのボーカルは生まれてからこれまで、盗みなんて一度もしたことがないピエから、この役が決まったとき、彼女はドキドキだったピエ。
Vo うん。ドキドキだったよ。でも、お兄さんが財布を身につけていないんじゃ、盗めないよね。
B そうなると、うちのボーカルは残りの時間、手のひらの上で小銭を四枚遊ばせておくことしか出来ないんだピエ。
Vo まあ、わたしは別にそれでもいいんだけどさ……。
あとは、こうやってソファーの端に座って、インタビューが終わるまでひとり静かに小銭をチャリチャリ遊ばせておくよ。
―― なるほど。じゃあ、ちょっと待っていてください。カバンの中から財布を取ってきますから。それで、ズボンの左ポケットに入れておきますね。これでいいですか?
Vo&B ありがとうございます!
ドラム(以下 Dr) ウフフフフッ。ウフフフフッ。
―― あの……財布の件が解決したところで、急にドラムの方が笑い出したのですが……これは?
B ピエ。俺様のご主人様は、いつもこうして笑っているんだピエ。なにも珍しいことじゃないピエ。
―― なるほど。確かにドラムの方は、この部屋にいらしたときからずっと微笑んでおられましたね。
Dr ウフフフフッ。ウフフフフッ。
B ピエ。それで俺様のご主人様が、こうして声を出して笑いはじめたときは、ちょっと
―― そうですか。これは、心寂しき微笑みなんですね。
では、ドラムの方に関して、少しお話を聞かせていただきたいのですが。ピエロさんのご主人様は、このドラムの方なんですよね?
B ピエ。
―― そのことについて、もう少し詳しく説明していただいてもよろしいでしょうか。
B ピエ。俺様の首輪から伸びたこの鎖を握りしめて、犬でも散歩させているかのようにピエロを操る少女――それが、うちのバンドのドラムなんだピエ。
Dr ウフフフフッ。ウフフフフッ。
―― ピエロをペットとして飼っているドラマーなんて、世界中探してもなかなかいませんよね。
ただ、この『スクールカーテン』というバンドは、
それって、このバンドが目指す
B ピエピエ。それは違うピエ。
俺様のご主人様がメンバーの中で、ある意味一番怖ろしい人物ピエ。
―― と言いますと?
B いつも微笑んでいる人って、逆にちょっと怖くないピエか?
特に面白くない場面でも常にニコニコ笑っているんだピエ。しかも、ピエロの首から伸びた鎖を握りしめながらずっとニコニコしているピエよ。
得体の知れない薄気味の悪い人物ピエ。
―― なるほど。わかる気がします。
それではドラムの方にお尋ねしますが、常に微笑みながら活動したり演奏したりすることで、苦労している点などはありますか?
Dr ウフフフフッ。ウフフフフッ。ウフフフフッ。ウフフフフッ。ウフフフフッ。ウフフフフッ。ウフフフフッ。ウフフフフッ。ウフフフフッ。ウフフフフッ。ウフフフフッ。ウフフフフッ。ウフフフフッ。ウフフフフッ。ウフフフフッ。ウフフフフッ。ウフフフフッ。ウフフフフッ。
B なっ? うちのバンドのドラム、怖いピエ?
―― はい。すみません。
Dr ウフフフフッ。ウフフフフッ。ウフフフフッ。ウフフフフッ。ウフフフフッ。ウフフフフッ。
―― ごめんなさい。
Dr ウフフフフッ。ウフフフフッ。ウフフフフッ。ウフフフフッ。ウフフフフッ。ウフフフフッ。
―― あの……ピエロの方。
これは、どうしたら終わるというか、許していただけるのでしょうか?
B ピエ。まあ、笑うのに疲れたらそのうちにやめるピエ。
Vo 今だ! 隙を見せたね、お兄さん!
―― なっ!? あなたは、窃盗犯役のボーカルの方!?
Vo へへっ、お兄さん。この通り、財布はいただいたよっ!
―― お見事! 私、財布を盗まれてしまいました。
いやぁ~、インタビュー中に財布を盗まれたのは、私もはじめての経験です。
B ピエピエ! インタビュアーさん、俺様のバンドのボーカル、すごいピエ?
―― はい。とんだ悪党ですね。許せない!
おそらく、インタビュー中に財布を盗まれるなんてことは、この『スクールカーテン』のインタビュー以外では絶対に経験できないでしょう。
ホント、あなたたち悪党ですね!
Vo&B
―― いえいえ。
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