生徒自治委員会、瓦解前夜-2
学園祭まで二ヶ月を切っていた。
授業が終わってすぐ、陽太郎とダンス部部長氏と共に三年まみれの中央校舎へと赴いた。
ダンス部の模擬店として割り当てられた教室の視察をする必要があった。
「前日夜に機材を搬入して配線に合わせて配置をして……飾り付けの時間はどうするか」
電源問題は解決した。しかしもっと肝心な問題があった。
使う教室は三年生の教室だったからだ。
準備時間は学園祭一日前の放課後以降だけだ。
「い、一応、これが、提案なんですけど、窓から上半分以上のみに飾り付けを制限してもらえれば、放課後に少しずつやっても、邪魔にはならないと思います」
どうして俺の無意識は『一応』なんて言葉をつけるんだよ!
適当に考えたと思われたらどうすんだよ!
ダンス部の笹井本部長氏は物腰が柔らかいが、もう一人の体格の良い三年生が怖くて仕方なかった。
「えと、看板は自立型を作ってください」
「自立型?」
「ええと、あらかじめ別の場所で看板を作っておいて、後はここに運び込んで置くだけでいい物です。壁に大きい看板をかけるのは設置に時間がかかり過ぎますので……」
「ああ、分かった。運んで置くだけで済むするようにってことか」
「は、はい、そうです」
ふう、伝わった。テンパりすぎだぞ俺。
「これが設計図です。エレベータに乗る大きさにしてください」
立て看板の設計図は資料室の山から発見した物で、俺のアイディアではなかった。
過去の資料にはこういう物が埋もれている時があるので、見て損はないってもんだ。
「あ、あと、調理器具とかも全部一階の空き教室に保管して運ぶようにしてもらえれば、多分効率的に設置が出来るかと。それから……」
「ほう」
三年の先輩も真剣に聞き入ってくれているが、体の緊張がピークに達し始めていた。パニックを起こしそうだった。
「それから、職員室からパーテーションを借りますので、それを厨房と、客席の間仕切りに使ってください」
ふぅ、何とか伝え切れた。
これが一番の時間節約になる。厨房スペースと席を分けるのは大体暗幕なのだが、そもそも暗幕をぶら下げる作業がかなり面倒臭い。
教室の上窓の窓枠と廊下側の上窓の窓枠に棒または物干しひもを引っ掛けて暗幕を吊るすのだが、これがなかなかに時間がかかる作業だ。しかも落っこちてオーブンやホットプレートにかかるようなことがあったら目も当てられない。
「初めて徹夜しなくて済みそうだな……マコトはどうだ? 部長なんだから判断してくれ」
「は、はい……うん、この案でやらせてもらうよ」
俺の
「あ、ありがとうございます。あ、あと、前日の職員室からの運び出しも皆様にお願いします。ええと、割り当て分には付箋を貼っておきますから、それを引き取ってください」
「うん。何から何まで助かるよ。当日は宜しく頼む!」
笹井本部長氏に深々と頭を下げられた。
三年生のダンス部員も同様に頭を下げる。
「あ、いえ、大丈夫ですんで! そんなことしないでください!」
しかし、できた! 要件全部伝えられたよ俺! 陽太郎の力を借りてないよ!
後ろに陽太郎がいたからこそ頑張れたのは確かなんだけど。
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