嘘恋

@komatsuna621

第1話

「晴翔のこと、ずっと好きでした。付き合ってほしいです」



告白はLINEじゃなくて、直接するってずっと前から決めていた。


無駄なことは長々と言わずに、伝えたいことをシンプルに。


日直で日誌を書くために教室にいた晴翔を待ち伏せするわたしを、何度も何度も想像していたけど、まさか現実になるなんて。



吹奏楽部の名前の分からない楽器の音と、校庭で練習するサッカー部のいかにも"青春"という掛け声が、誰もいない放課後の廊下に響く。



心臓はありえないほどにバクバクしてるのに、気持ちは落ち着いている、という不思議に矛盾したこの瞬間が、変に心地よく感じられた。



ごく



と、晴翔が唾を飲む音が微かに聞こえた。




俯いていたわたしは顔を上げ、1mほど向かいに立つ晴翔の顔を見てみた。


目が、合った。



その瞬間、晴翔の口が開き、



「うん、いいよ」



と、少し低い声が廊下に響いた。






11月中旬。


窓から見える夕日は少し赤く、晴翔の顔をほんのりと照らしていた。

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