帰りは
「じいさん!帰りの乗り物はそっちじゃないでしょ!」
「あれ、そうか」
「こっちに来る前にあんなに確認したじゃない」
「はは、すまん。君はベテランかもしれんが私は初めてなもんでな。そうか、行きは速く、帰りはゆっくり、だったな…」
「…ったく、昔っからそうやってボーッとしてんのよねあんたは…」
私は妻が文句を言いながらも差し出してくれた手を取り、暗紫色の丸っこい牛にどっこいせと跨った。
私のものよりも皺の少ない妻の手に触れた際に、「その歳月」の相違を改めて意識し、一瞬哀感に浸ったことを彼女に伝えたら、またいつものようにからかわれるだろうか。
8月半ばの、まだまだ暑い日のことだった。
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