手当て

リリーには、だいじなたからものがある。

リリーのてのひらより、ちょっとちいさな、しょうぼうしゃのミニカー。なまえはレッドちゃん。


ちいさいけど、ほんもののしょうぼうしゃみたいにボディのあかいいろも、タイヤもホースもちゃんとついてる。かっこよくて、だいすき。


このまえようちえんにいくじゅんびをしてたときに、レッドちゃんをつくえからゆかにおとしちゃったの。バンっておとがした。

「わっ!ごめんね!」

あわててひろってみたら、ぬれてる。

「?」

てについたおみずをみてみたら、まっかっかだった。

よくみたら、レッドちゃんのみぎのぜんりんのすぐうえにきずができてて、あかいおみずはそこからでてた。

なんだっけ、これ、もしかしたらいつかリリーがころんだときにひざからでたのとおなじ…

そうだ!「ち」だ!

ちがでたとき、リリーはすごくいたくていっぱいないちゃった。レッドちゃんもいたいはずだ。


だらだら、だらだら


ちがどんどんでてくる。レッドちゃんのボディよりもこい、あかいち。


ゆかにぽたぽたとおちていく。ちっちゃいみずたまりがおおきくなっていく。


どうしよう、ごめんね。

どうしよう、どうしよう。


なきそうになった。



ようちえんのせんせいは、リリーがころんだとき、どうしてくれたっけ?


そうだ!


リリーはだいどころにはしってとだなをあけ、ばんそうこうをとりだした。


たしかあのとき、せんせいはこれをはってくれたんだった。レッドちゃんにはおおきすぎるけどしょうがない。


レッドちゃんのけがにばんそうこうをはった。かえるさんのえがかかれたばんそうこうは、やっぱりレッドちゃんにはおおきくて、レッドちゃんのまえはんぶんくらいをかくしちゃったけどしょうがない。


それから、せんせいがまえリリーにしてくれたみたいに、「いたいのいたいのとんでいけ」をなんどもやってあげた。


そうしてるうちに、パパの「そろそろいくよー」というこえがきこえた。いつもはレッドちゃんもつれてくんだけど、まえリリーがかぜひいたときはようちえんにいけなかったことをおもいだした。びょうきやけがをしたら、ようちえんにいけないんだった。

だから、しんぱいだったけど、レッドちゃんにはおるすばんをしてもらうことにした。


おちないようにつくえのまんなかにおいて、「すぐかえってくるから、いいこでまっててね」といって、さっきゆかにおちたちをティッシュでふいてから、いそいでパパのいるげんかんにむかった。


ようちえんでは、サイコロをつくってすごろくをしたり、ブランコをしたりしてたのしかったけど、ずっとレッドちゃんのことがしんぱいだった。なんにんかのおともだちやせんせいに「げんきないけど、だいじょうぶ?」ときかれた。


おともだちにレッドちゃんがけがをしたことをはなしたら、みんなしんぱいして、「はやくよくなるといいね」っていってくれた。せんせいはさいしょはびっくりしたかおをしたけど、「リリーちゃんがちゃんとてあてしてあげたんだから、きっとだいじょうぶだよ」っていってくれた。


ようちえんがおわっておうちにかえってきたら、うがいもてあらいもしないでまっすぐレッドちゃんのところにいった。なおっていますように、なおっていますようにとなんどもおねがいしながらそっとばんそうこうをはがした。


ちはとまってて、きずもきえてた。もとどおりのレッドちゃんだった。

なおったんだ。よかったね!

リリーは、あんしんしてレッドちゃんにチューをした。


ウーウーウーというサイレンが、とおざかっていくのがきこえたきがした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る