最終話「聖なる鐘は皆の心に」

 そしてクリスマス・イブの日

「さて、そろそろ皆にプレゼントを配りに行こうかのう」

 サンタさんは言いました。

「僕、今年も頑張ってソリ引きますよ」

 トナカイのルーははりきっています。

「今年は私も手伝うわよ、いいわよねおじいちゃん」

 サンタさんの孫娘のラチカが言いました。

「サンタさん、僕も手伝います」

「オイラも手伝うよ」

 ロボットのニコと元盗賊のチャスタも。

「子供達の笑顔、見てみたいですね、お供しますよ」

 そしてあの魔法使いも。

「ここにはいないけどドンタさんもレイカさんもナディーちゃんも心はいつも一緒だよね」

「ええ、それじゃあ皆、行きましょう!」

「おおー!」

 

 皆はルーが引くソリに乗って世界中を周りました。

 誰もが一度は歌ったことがあるかもしれないクリスマスソングを歌いながら。



 あるところでは煙突から

 またあるところでは窓からと

 子供達にプレゼントを配って行きました。



「どうやらサンタのやつは無事にプレゼントを配れているようじゃな」

 王様が空を見上げながら言いました。

 そして王子様が言いました。

「私も子供の頃は貰っていました。もう大人になってしまったので貰えないと思っていましたが」

「ん?」

「今年は最高の贈り物を貰いました。ありがとう皆さん」

「サンタクロースはいくつになっても皆の心の中におるんじゃ、それを忘れぬようにな」



 ねえ、パパ。ニコがサンタさんと一緒にいるよ。


 ああ、そうだね。


 いいなあ。僕も一緒に行きたかったなあ。

 でも今年はパパとクリスマスパーティーができるからいいや。


 ……そうか、ありがとう。


 さ、二人共、ご馳走ができたから食べましょ


 うん、ママ




「わし如きのところにわざわざありがとうございますじゃ。しかし今年はなんでまた? いつもは誰も来んのに」

「それですよ。長い間封印を守るお仕事でご苦労されているのに、労いもせず申し訳ありませんでしたと仰せでしたよ。最高神様は」

「そうですか、恐れ多い事です」

「さ、私達と一緒にクリスマスパーティーしましょ」

「こんなピチピチギャルの天使様達と……長い間の苦労も吹っ飛びますわい」




「ただいまー」

「お帰りなさーい。ね、どうだった若い頃のわたしって~?」

「あんまり変わんなーい」

「あら、そんな事ないわよ~。わたしこれでも成長したんだからね~」

「どこがだー」

「パパに毎日胸揉んでもらったから大きく」


「こ、こら。子供にそんな事言っちゃだめ」

「そうよ、まったくこの変態義姉は何を」


「裸マントだった超変態おばちゃんが言うなー」


「おばちゃんじゃなくてお姉さんとお言い」


「やだよーだ、もう四十近いくせにー。マリーのママのくせにー」


「……このチビ」



「ナディアがあのナディーだったって、あの時はわからなかったよ」


「お兄ちゃんって泣き虫だったんだね、『やだよ~、行かないで父ちゃ~ん』って」


「そりゃ俺だって昔は子供だったんだから、泣き虫だったりもするさ」

「お兄ちゃん、パパの子供になれてよかった?」

「ああもちろん。父さんと母さんの子供になれて、ナディアの兄になれてよかった」

「あたしもー」


「さ、皆さん、料理ができましたよ」

「おじちゃんありがとー。おじちゃんって火使うの得意だもんねー」

「ええ、炎の精霊のおかげですよ」

「あたしのパパって凄いでしょ」

「うん、そうだねマリー」

「ねえナディーおねえちゃん、今度はあたしも連れてって」

「いいよー」


「み、皆、早く食べよ」

「そうでーす。早く食べましょー」

「はーい、あ、皆、メリー・クリスマス!」




「子供達の笑顔、こんなにいいものだとは思いませんでした」

「そうじゃろ、いいもんじゃろ」

「……この思い、元の世界で伝えていきましょう」

「そろそろ行くんじゃな?」

「はい。私の世界はこの世界から近いので、ギリギリ今まで居れました」

「お前さんが伝えてくれたら、わしらの事も伝わりやすくなるじゃろうな」

「いつか全ての世界がそうなるよう祈ってますよ」

「ありがとう」

「こちらこそです。それではまた」

 魔法使いは元の世界に帰って行きました。




 そして

「終わりましたね」

 ルーが言いました。

「そうじゃな、皆喜んでくれて何よりじゃ、皆も手伝ってくれてありがとう」

 サンタさんは皆にお礼をいいました。

「さ、私達も帰ってクリスマスパーティーをしましょ」

「そうじゃな」

「うん、そうだね」

「オイラパーティーなんて初めてだ」

「僕は何時ぶりだろ?」


 カーン……

 カーン……


「あ、聖なる鐘だ」


「聖なる鐘って何だよ?」


「毎年聖夜に鳴らす鐘の事よ」


「そうじゃよ、そしてこの鐘は全ての世界に向けて鳴らしているのじゃよ、皆が夢や希望を持てるよう願いを込めて」


「へえ、そんなものがあったんだ」




「きっと聞こえていますよね。全ての世界の子供達、いや大人達にも」

「ああ、そう願いたいものじゃ」




 聖なる鐘は皆の心に聞こえているさ、きっとね。




聖なる鐘は皆の心に 完

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聖なる鐘は皆の心に 仁志隆生 @ryuseienbu

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