第1章/リアル異世界学園
第11話/いもう……と?
第11話
女の子だーとか、アニメ声だーとか、早朝イベント発生だーとか。本来はそんな皆得情報こそが真っ先に感受されるべきだ。その皆得情報があってこそ俺達は続きが気になってしまうのだから。
「起きろタワシ!」
「ぐぶぅー!?」
……繰り返す。女の子だーとか、アニメ声だーとか、早朝イベント発生だーとか。本来はそんな皆得情報が真っ先に感受されるべきだ。
なのに、なのに俺は……!
(は、腹にギロチンが落ちてきた!?)
そのように感受した。全く違う意味で腹筋崩壊したんじゃないかと思った。
もちろん実状はすぐに分かった。どこのどいつか知らないが、寝ている俺の腹目がけて両膝ダイブしたのだろう……!
「死んだ?」
「そ、そこは『起きた?』の間違いじゃない……かっ!?」
ことここに至って俺は襲撃者の姿をしかととらえ、激しく動揺した。
腕立て伏せでもするような体勢で俺に顔を近づけていたのは、見るからに年端もいかない制服少女だ。なぜかこちらを思いっきり睨んでいるのだが、それでもすごく可愛い。大きな瞳と小粒の鼻、頬と唇はふっくらでほやほやだ。お金を払ってでも触ってみたいくらいだ(正直)。
(……って、これはどういう状況だ!? 誰だこの美少女は!?)
「ちっ! 生きてやがったか」
えっ、ガチの舌打ち?
こんな露骨にされたの、生まれて初めてだ。
「お願いだからさっさと死ぬか蒸発してよ。妹が苦しんでるの見て楽しいわけ?」
「……え?」
い?
いも?
いもう?
いもう……と?
「はい嘘乙! そもそも俺に妹なんていないし、仮にいたとしてもお兄ちゃんに舌打ちするようには教育してない!」
「あ、そう」
「リアクション薄っ!?」
自称俺の妹は俺の腹から降り、続いてベッドからも降りると、
「一人で起きられないって、ガキなの?」
口を尖らせ、彼女が歩み寄ったのは部屋の壁。
何の変哲もない壁だった。
「……毎回言ってるけどさ。授業に遅刻するのだけは許さないから」
次の瞬間、自称俺の妹が壁の中に吸い込まれていった。
それはまるで幽霊みたいに消えたのだ。
「え……? まさか今のは……幽霊?」
「あとっ!」
「おうっ!? また出た!?」
「どんな夢見てるのか知らないけど毎回テント張ってんのもやめてくれる!? それ見てあたしがタワシ如きに欲情するとでも思ってんの!?」
壁から顔だけを覗かせて怒鳴り散らす自称俺の妹だった。……うん、ツッコミどころがありすぎて朝から泣けてくる。まさか男の生理現象で怒られるとは思いもしなかった……。
「死ね! このシスコン!」
「…………………………」
なるほど、つまり俺はタワシでガキでテントでシスコンなのか。
そうかそうか。自称俺の妹の、俺に対する好感度だけなら、とても分かりやすくて助かる。
チョベリバだ(死語)。
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