第1の異世界/最強らしいのだが最強できてない俺(学園異能バトル編)
幕間1/動機は『よいしょ』
幕間1
オニイチャン―――それは基本、血の繋がりがある歳下の女の子(妹)が使ってくれる、兄の呼び方である。
妹ありと妹なしの日本男児では妹に対するイメージは大きくかけ離れていたりするが……いずれにせよオニイチャンと呼ばれて不快に思う男児は少数派ではないだろうか。
例えば他のバリエーションだったとしても、
「にいちゃん!」
「おにいさま!」
「にーさん!」
「にーちゃん!」
「にぃに!」
「あにき!」
「あにじゃー!」
どうだろうか。このように呼ばれては喜びを隠しきれないのではないだろうか。
ただしこれらは兄への好感度が高い妹達なので、参考にならないかもしれない。
「さっさとパン買ってこいよ、にいちゃん」
「おにいさま、わたしの私物に触らないでください!」
「あぁ、にーさんのセーブデータなら削除しといたよ?」
「にーちゃんなんかヴァンパイアみたいに太陽光で死ねばいい」
「え? あたしににぃにっていたっけ……?」
「んあー、あにき超殴りてぇー」
「ベッドの下にエロ本落ちてたから机に上げといたぞ、あにじゃー!」
……さあこれでも妹が欲しいだろうか。しかしながら妹なしの著者は辛うじてイエスである。確かに不快な台詞が出揃っているものの、それら不快と『一生妹がいないステータス』を天秤にかけた時、どちらがマシかという話だ。
罪を憎んで妹憎まず―――決して難しくないその精神を築き上げれば性格イケメンにもなれて一石二鳥。妹の友達とも連絡先交換くらいなら余裕のはずである。もちろん邪な気持ちは何もない(白目)。
さてここからが本題である。なぜ出し抜けに妹の話題を取り上げることにしたのか。当然これには理由があった。せっかく『新作始めるか。やっぱり妹キャラよいしょしたいよなぁ』と、作品の序盤を書き出していた矢先に降りかかった、とてつもなく不可解な不幸―――。
例の非リア充少年が、この物語の主人公として上がり込んできたためである。
謎の人物が主人公として内定していたという精神的苦痛。そして主人公の文章が自動で書き込まれていくという絶対的恐怖。……こんな怪奇現象が起きている作品なんて、放棄する以外に考えられないはずだった。
しかし僕は放棄しなかった。
この呪われた作品を、あえて放棄しないことに決めたのである。
それは一体なぜなのか。ちなみにその理由は『一度取りかかった作品は必ず完成させる』という、大変立派なクリエイター精神からではなく。
単に主人公がムカつくからである。
では何だ? この主人公は僕が理想とする妹と作品の中で好きにイチャイチャできるのか? そんなのまったくもってうらやま……けしからんではないか。
そこで僕は逆転の発想でいこうと閃いたのである。僕の理想の妹からの好感度は最悪で、主人公には妹とイチャイチャする隙を一切与えなければいいと。
当初とは真逆の設定で、妹をよいしょしようと考え直したのである―――。
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