第61話/ハンパないやってしまった感
第61話
その後どうなったのかは割愛させてもらうとして(汗)。
今日は他に用事があります……と癒美が放心状態で帰っていった。
時計を見れば十六時過ぎだった。
ピンク色のカーテンが西日に負けてオレンジ一色となっている。
学園の保健室で目覚めた時のことを思い出し、少し懐かしくなった。
そんな折、
「憑々谷! ご飯にするか? 風呂にするか? それとも……子作りか!?」
「いやいつまで俺のターンがやってこないんだ!?」
完膚無きまでに超デレデレモードの大和先生が、ずずずいーっと顔を近づけてくる。俺はもう怖がるのもバカらしくなって、ついにブチ切れた。
「あんたは俺とトピアの敵だったろ!? なのに何でこんな、一家団欒みたいなノリになってるんだよ!? トピアもトピアだ! お前、先生に脅されてたりするのか!?」
「……、すみません憑々谷君。少々悪ふざけが過ぎました。そんなに苛立たないでください」
トピアは先生とテーブルについてお茶を飲んでいた。やはりそれは信じがたい光景だったので、俺はますます訳が分からなくなっていた。
「全部説明してくれんだよな? あの戦いの後、色々あったんだろ?」
「はい。この三日間でひっくり返りました。恐らくは憑々谷君にとって良い方向に」
「え?……み、っか?」
「そうだ憑々谷。正確には丸二日と十八時間が経ったのだ。つまり今日は木曜日。明後日が武闘大会となる」
「! お、俺は……そんなに寝てたってのか!?」
「はい」「ああ」
二人に即答されてしまい、俺は一瞬眩暈を覚えたが、
「っていうか……え? トピア、さっきお前、何て言った?」
「憑々谷君にとって良い方向に。状況がひっくり返りました」
「どういうことなんだ?」
「えっと、それは……」
「わたしから説明した方が早いだろうな」
先生が割って入ってくる。
湯飲みを持ち上げ、お茶を一気に呷ると、
「まずは褒めてやろう。お前はあの戦いでわたしを倒したのだ。お前が苦しそうに何か言っていたが、それを聞き終える前にわたしは気絶したのだからな」
「嘘だろ……」
勝利の手ごたえなんて感じ取れなかった。それだけにビックリだ。
先生がこんなにデレデレになっているから、事実で合っているのだろうけど……。
「ただし、だ。全員が気絶している中で、いち早く目覚めたのはわたしだった。わたしはお前と早く子作りがしたい衝動に駆られながらも、車を調達し、お前達をわたしが住むこのマンションに移送した。……そして、それぞれの怪我の手当てをしている最中に、トピアが目覚めた」
「そ、それで? お前らはまた戦ったのか?」
二人を見合わせると、トピアが首を横に振った。
「いえ。わたしは再戦の気力が湧きませんでしたね。先生が……今以上に憑々谷君を溺愛している様子でしたから……」
「……………………、そうか」
良い男の条件を満たした上で、先生の異能力から生き延びてみせたからだな。
何だこのやってしまった感。ハンパない。
どんな溺愛っぷりだったんだろう……(畏怖)。
「話を続けるぞ。わたしは真っ先にトピアに訊ねた。『憑々谷がわたしの知っている憑々谷ではなかった。コイツはどうなってしまったんだ?』とな。だってそうだろう? あんなろくでもない異能力でわたしに勝とうとは、正気の沙汰ではない」
……あぁ、そうだな。先生からしたら俺は
「先生に詰め寄られたわたしは、これ以上憑々谷君に危害を加えないことを条件に、憑々谷君の事情を先生に明かしました。……すみません、もうそうするしか思いつかなかったんです……」
「あー気にするな。元々俺が提案してたしな。先生を味方にしたらどうだ、って」
肩身の狭そうなトピアに俺は笑ってみせる。
それを見、彼女が僅かに目尻を下げた。
「それで? お前らは俺に関しての情報を共有したわけだろ? じゃあ異能警察には黙っておくことにしてくれたのか?」
「いや。黙ってなどいられるか」
「……。えっ?」
俺は思わず顔を強張らせた。
(それってつまり……異能警察に報告したってことか? 俺がこの世界の人間じゃないこととか、そもそもこの世界は小説の中だってことを……!?)
だがそれならそれで疑問だ。
どうして俺は今、先生の部屋で療養していられるんだ……?
「ふん。どうやら混乱させてしまったようだな。ならば端的に言おう―――」
先生が口を閉じる。
とその時、トピアが何かを思い出したように溜息を溢した。
かくして大和先生は俺に、驚愕必至の事実を告げてきた。
「わたしはな、部内で大暴れしたのだ。『憑々谷はわたしのモノだ! 手ェ出したら必ず全員殺す!!』ってな? くくっ、
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