あとがき
クリスマスカードをお読みいただき、ありがとうございます。いかがでしたでしょうか?
苦い現実があるからこそ、人は誰でも幸運と幸福を夢見ます。夢見た結果がどうなるかのところは、また現実に戻るわけで、そのいくつかは叶い、いくつかは夢のままで消滅します。そしてそれをもとに、また新たな夢を見る……。人生というのはその繰り返しだと、わたしは思ってます。
クリスマスは、そうした夢と現実の乖離が一番大きくなる日なのかなと。その日なら、叶わないことが叶うような気がする。でも、現実には一年のうちの単なる一日に過ぎません。クリスマスカードのメッセージも然りで。そこにどんなに希望に満ちた明るいメッセージが記されていても、それが現実から大幅に乖離している限りは絵空事に過ぎません。見る夢を高く押し上げることは出来ても、それを実現させるための熱源としては心もとないんです。
単なる儀礼としてのクリスマスカード。この話は、そこから逆説的にスタートさせました。めちゃくちゃな想いを背負わされたトンデモなカード。でも、そこにあるのは紛れもなく強い想いです。それが、どんなにみっともない歪んだものであってとしても、単なる紙の上の印刷文字ではないんです。その想いが交差し、反発し合い、響き合い、最後に現実を動かす力に変わるところをぜひみなさんに見ていただきたかった。わたしの狙いはそれだけです。
◇ ◇ ◇
おそらく。多くの方がモミを嫌なやつと認識し、三村をナイスガイと評価するでしょう。ですが、実は中身は同じです。
生きるために、他者に見える我欲の切片を極力小さくしてる三村。それを一切隠さずに、常に剥き出しにしてるモミ。どこまでも自分に正直であろうとするモミは生きにくく、極限までそこを調整しようとする三村は現実に順応しやすい。それだけです。どっちが正解ということではありません。
ただ、どのようなライフスタイルを選択するにせよ現実と夢とのバランスはどこかで取らないとなりません。今回受験生をモチーフにしたのは、それが一番分かりやすく書けるだろうと思ったからです。
もし、クリスマスの奇跡というのがあるのならば。四人それぞれが、くそったれのカードをきっかけにして自分のポジションとモチベーションを見直せたことがそうなのかもしれないなと思います。そして再考を元に彼らが決めた選択が結果として吉と出ても凶と出ても、きっと彼らはそれをこなしていける。わたしはそう信じています。
あらためて。読了してくださったみなさんにあつくお礼申し上げます。ありがとうございました。
クリスマスカード 水円 岳 @mizomer
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