第6話 大連へ辿り着くまでの「中国らしい」難題との遭遇
大連へ辿り着くまでのさまざまな「中国らしい」難題との遭遇
1986年の8月下旬に、福岡空港から大阪空港経由で上海へ行き、上海から大連へ、その日のうちに向かう予定(30年前は、残念ながら福岡空港から大連への直行便はなかったのである)で、先ずは大阪空港には無事に到着はしたが、浮かれた気分を一瞬にして吹き飛ばすようなアナウンスが流れたのである。
「上海行きは、機体の故障により、出発が遅れますので、しばらくお待ち下さい!」
上海では、乗り継ぎの時間を、余裕を考えて4時間(長すぎるかなあーとも考えたが、何が起きてもこれだけの時間があれば、大丈夫だろうと思案した挙句の待ち時間であった)にしていたので、まあー何とかなるだろうと高を括って、代行業社であるJAL(現在でも、日本ではJALが代行している)から配られた昼食用のパンと飲み物(このサービスは、定刻の出発であれば、機内で食べるはずであったのに、出発が遅れたのでJALがお詫び代わりに配った日本では当たり前のサービスであり、当然のサービスであったが、後に上海に到着して、中国のサービスの酷さに直面して、認識の甘さを痛感することになる)を食べ、飲み終わると、私が新聞を読む傍らで子供たちは、至極、当然であるが、旅行気分ではしゃぎ回っていた。
そのうちに1時間、2時間が過ぎると、段々と心細くなっていくけれども、何せ、飛行機のことだから、どうすることも出来ず、また、何回、尋ねても、担当者は、あとどれ位で修理できるのか専門家ではないので解りませんとしか答えるだけであり、とにかく待つしかないんだと自分に言い聞かせていると、また、アナウンスが流れたのである。
「上海行きは、機体の故障が修理できないため、現在、上海から別の飛行機が大阪空港へ向かっておりますので、もうしばらくお待ちください!」
ええー!?、別の飛行機が大阪へ、今、向かっている!?
すると、ベター(ベターハーフのことである)が、混乱した様子で私に尋ねてきた。
「上海にギリギリに到着したとすると、荷物を受け取って、大連へ向かう飛行機の搭乗手続をして、搭乗ゲートに向かうことになるけれども、大丈夫なの?」
「まだ、どれくらいの遅れになるのか、現時点では、さっぱり解らないのだから、すべてが決定してから対処は考えれば、いいんじゃない?」
「だから、私が上海に1泊してから、翌日に大連へ向かえばいいんじゃないのと言ったじゃないの!」
「今更、そう言っても、どうしようもないじゃない!予想できない事態が発生したのだから!」
「私の話を、いつもちゃんと聞かないから、こうなるのよ!」
とにかく、ずっと以前から、思っていたことだが、女性は異常事態が発生すると、どのように対処すればいいのか冷静にどうも考えることができない人種のように感じる(勿論、これは私が、私のベターだけに感じる特別な感情かもしれないが)。 とにかく、パニクって感情を前面に出すだけであり、ギャーギャー騒いでいるだけなのである。
この場面で、男もパニクるようになると、もう一巻の終わりであるが、うまい具合に、男は一般的に、冷静な人種のような気がする(これも私だけが感じる特別な感情かもしれないが)。
結局、8時間遅れで、飛行機は上海へ向けて飛び立ったが、それまでのベターの動揺振りは、想像におまかせするとして、次なる難題は、我々は上海でどうすればいいいのか、そして大連で待っているあの学生にどのように連絡すればいいのかに移ったのである。
ようやく上海に無事に到着はしたが、上海で待っていてくれる人は、当然のことながら誰もおらず、大連へ向かう飛行機はもう既になく、さらに加えて必要な書類の不備まで税関の職員にぶっきらぼうに指摘され、何とか書類が完成し、出そうとしながら辺りを見回すと、我々5人が最後の旅行客らしく、他の人々の姿がもう近くにはないばかりか、驚いたことに空港のすべての職員までもが、一斉に帰ろうとしていることに気がついたのである。
ベターが、「どうして、日本人のグループの人に、一緒にホテルへ連れて行ってもらうように頼まなかったの?何も解らない上海でどうする積りなの?」と、また、ギャーギャーと騒いでいたが、もう既に遅いのである。私は、ベターには、一言も返事は返さず、一目散に空港の職員のいるカウンターを、中国人の制止を無視して突き進み、大きな声の英語でがなり立てながら、叫んだのである。「誰か、ここに日本語の解る人はいませんか?!」と。
すると、「どうしましたか?私は、日本語が解りますよ!」と言う、地獄に仏のような落ち着いた日本語が聞こえてきたのである。
彼の落ち着いた話し振りに、私も徐々に冷静に事情が話せるようになり、事の顛末を話し終えると、「本当に大変でしたね!私が、明日の大連便はちゃんと確保しますから、安心して下さい!」と、言ってくれたが、この時の嬉しかった事といったら、まさに筆舌に尽くし難く、天にも昇るような気持ちであった。
戦に勝利を収めて凱旋する将軍のような気分で、手には戦利品のごとき明日の切符を携えて帰って来ると、事情を聞いたベターの喜ぶこと、喜ぶこと、その姿を見るにつけ、それまでの怒った姿とダブってしまい、本当に女性は単純な人種なんだなーとまた考えてしまった。
ところが、迂闊な事に、その日に宿泊するホテルを決めていないことにベターが気付くと、見る見るうちに、その形相が再び変化し、「どうして、その人に頼まなかったの?何でそこまで気が付かなかったの?」ときたのである。
もう、その頃には、残念ながら、彼も既に帰っていたのである。一難去って、また一難であったが、さて、その時の上海空港での我々の置かれた状況が、どのようなことになっていたか想像できるだろうか?
空港には、外国人の旅行客は、我々の家族の5人だけであり、中国人の空港職員の姿も誰一人としてなく、その先の出口にたむろしている集団の姿を見て、我々は絶句してしまったのである(謎の怪人、「M氏」との出会いは、次回です)。
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