第13話 認識の大穴(2/4)

 時間が経ち、現在放課後となった。

「……」

 放課後の部室棟の廊下を意気消沈しながら、俺はユキと共に部室へと歩みを進めている。

「あの後、何かあったんですか?」

 俺の様子を見て、隣を歩くユキが尋ねてくる。

 溜息を漏らしながら、あの後神瀬フウリを追いかけた時の話をする。謎の柔道着を着た巨漢に襲われ、何やかんや神瀬フウリと話をすることが出来たことを話した。

「柔道着? えっと……それで、どうなったんですか?」

「何か知ってそうな素振りはあるんだが……何となく、俺等みたいな記憶の継続をしている訳ではないらしい」

「それはどういう……」

「友達に聞いたんだとさ」

 ユキの疑問に俺は答える。

 神瀬フウリに聞いたことを伝える。彼女にいくつか質問したが、記憶の継続をしていれば分かりそうなことに、彼女は一般の人と同じ反応を見せた。

 また世界の終わりなど、記憶の継続をしていないと分からないことに反応を示したりもした。最終的に、彼女が言った言葉はそれだったのだ。

 本当かどうかはさておき、そのことをユキに話すと彼女は考え込む。

 「……いったいどういうことなのでしょう?」

 さっぱりだ。

 例え、フウリが言っていたことが本当だったとしても、は、いったい何者なのか?

 ……いや、少しだけ予想が付く。

 というか、俺達の把握していない要因がない限りは、消去法である人物が浮かんでくる。

「……大野か」

「はい? 大野さん?」

「ああ、あの女が言っていた友達って大野のことなんじゃないかと思ってな。フウリは確か中村と昔からの付き合いらしいし、マルチ制作研究部の部室でも見かけたことがある。だとしたら、アイツが中村繋がりで大野と面識を持っているかもしれない。大野があの女に世界の終わりについて話したなんてこともあり得る」

「神瀬さんと大野さんが友人同士ということですか? それにしても世界の終わりのことを話したりするでしょうか?」

「う~ん……」

 分からん。

 以前大野は精神的に追い詰められていた時期があったらしいが、率先してこんなことを話したりするだろうか? それが考え難いとなったら、フウリが彼から聞き出した。もしくは友人事態が大野ではなく別の人物である可能性もある。

 最終的に行き着く結論は……

「会って話を聞くしかないか……」

 神瀬フウリに関しては考えるより、会って聞くしかない。これから部室に行く訳だし、大野に事情を聞けるかもしれない。

 これ以上考えても、何も出てこない気がする。

「それで……お前が言ってた、実験施設の設計を見直すって話はどうするんだ?」

 さっきのこの箱の中の構造を改めて確認する話の続きを引き出すと、ユキは答える。

「小倉さんのパソコンをお借りして、調べてみようと思います」

「ん? グーグルにでも資料が載ってるのか?」

 そんなことを聞くと、キョトンとユキは俺を見つめそして笑う。

「違いますよ。パソコンから箱の外の世界にある端末に繋いで、資料を持ってくるだけですよ」

「ああ……ああ!? 待て待てそれってつまり……」

「クラッキングです! まあでも、私自身の所有しているパソコンに対してですから、リモートコントロールに近いですが」

 彼女は得意げに胸を反らす。

 そんな彼女に、俺は一抹の不安を感じる。

「お前……パソコンなんて出きるの?」

「な!?」

 思ったことを素直に伝えると、ユキは少しだけ怒った表情を見せる。

「失礼ですね! 私だってこの計画の一端を担ってる研究員なんですよ! 小倉さん程ではありませんが、それぐらい出来るんです! この前もパソコンはそれなりに出来ると言いましたよね!」

「ほほお、それじゃあ、お手並み拝見と行こうじゃないか」

「その顔……信じてませんね」

 ユキは口をへの字にしてしまったが、俺は構わずそろそろ見えてきた部室の出入り口であるドアへと歩み寄ろうとした。


「とっとと出て行け!」

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