第12話 チュチュリナ・チュッチュリー(2/4)
翌日の昼である。
「なあ、カオル」
食堂で、カツカレーのカツを頬張る俺は、うどんを啜る黒髪癖っ毛セミロング眼鏡幼馴染みの竹人カオルに話し掛ける。
「ん? なに?」
カオルは、うどんを啜りながら上目遣いでこちらを見る。
「あーっと……チュチュリナ・チュッチュリー……だったか?」
それを聞くと、カオルは目を輝かせ、
「え! チュチュリナがどうしたの!まさかついにカツヤ君も興味出た! オープニング曲のババロアシンフォニーのCD貸して上げようか! 神曲だよ神曲!」
一気にカオルのテンションが高まる。
「お、落ち着け!」
俺は、彼女を宥めた後、
「まず、チュチュリナって奴が何なのかが分からん、そこから教えてくれ」
そう伝えるとカオルは、「えー!? 忘れたのー!?」と落胆しつつ教えてくれた。
「魔法の国から来た使者に魔法の力をもらったチュチュリナ・チュチュリーが、人間社会の悪の根元である眉毛デストロイヤーの陰謀に立ち向かう美少女系のアニメだよ。元は深夜アニメだったんだけど、ファンの要望で夕方に再放送することになった人気作なんだ! 主人公のチュチュリナが、触手に陵辱されるのがメインで内容はオマケに思えるけど、実は眉毛デストロイヤーは……あ、これ以上は止めておこう、ネタバレになっちゃう。後、面白い要素としてチュチュリナの設定が男の娘ってことだから、割とヤバい所まで放送可能っていう偉い人の審査を上手く掻い潜った神アニメなんだ!」
一度何処かで聞き覚えのある説明を受けるが、正直どうでも良いものだった。まあ、ただのアニメだってことは分かった。
「それで! カツヤ君もチュチュリーの信者になりたいんだよね?」
「いや、違う」
話が進まないので、そろそろ本題に入ろう。
「実はある美人にそのチュチュリなんとか……」
「チュチュリナー・チュッチュリー!」
「……ああ、それだ。そのアニメの名前を叫ばれたんだ。世界の終わりの時にな」
「世界の終わりに……ですか」
最後の一言で、カオルの隣に座ってオカラのハンバーグ等のヘルシーな自家製弁当を食べていた友人、梅沢ユキが反応する。
「どういう話なのか、詳しく教えて下さい」
彼女はポニーテールをなびかせつつ、話しに食いついてくる。落ち着いて話す為に、一間開けて俺は話を始める。
「まず二人とも、フウリって言う女のことを知ってるか?」
「フウリ? フウリって、あの神瀬フウリさんのことですか?」
「え? 何でユキが、奴のフルネームを知ってるんだよ?」
「え? だって、学内では結構有名な方ですし・・・・・・」
「そうなのか!?」
「ブッフウ!」
俺とユキの会話の間に、カオルは
カオルの横に居るユキが素早くカオルに水を手渡し、受け取ったカオルは水を一気に飲み干した。
「カツヤ君! まさかフウリさんのこと、知らなかったの!?」
「あ、ああ……」
何だよその反応は、そんなに有名人なのかよ・・・・・
「だって、この大学の美人コンテストで三連続優勝の逸材だよ! ファンクラブもあるし、乗馬部の部長だし、頭も良いし、話に寄れば近くに実家があるみたいで、しかも神社の巫女さんらしいよ!」
そうなのか……
「しかも、しかも! なんとウチらのトモミ先輩と同い年で、しかも幼馴染みなんだよ!」
「ああ……それは知ってる」
そのことは、以前中村からボコボコに殴られた時に聞いた話だ。それにしても話を聞く限り、非の打ち所のない優等生だな。
でも、何であの時あんな下水道に……
改めて、俺は二人に話そうと思ったのだが……
「ユキ、やっぱりこの話は、後で詳しく話したいんだが良いか?」
この事はカオルに話しても仕方ないと思い、ユキだけに情報共有をすることにした。これ以上は、コイツに余計な不安を与える話しになるかもしれないからだ。
「ほほう……」
案の定、カオルは不適な笑みを浮かべる。
「
そう言うと、カオルは俺の額めがけてチョップをかます。
俺は咄嗟に手の甲で払い退ける。
「な、何ぃ!?」
華麗に返され驚いたカオルに、俺は空かさずチョップで反撃する。
「ブッフウ!」
見事額に叩き込まれたカオルは、ブーブークッションのような断末魔を上げ額を手で押さえる。
綺麗にカウンタが決まり、思いの他気持ちが良かった。
「痛!」
と、思いきや、死角からユキのチョップを受ける。
「もう! なんで女の子を叩いているんですか!」
「いや……正当防衛だから」
ユキに怒られてしまった。カオルは、顔を押さえながら頭を振りながら、
「酷いよ! 最近、カツヤ君と梅ちゃんの二人で内緒話しばっかりしてさ! 何で私は除け者なの! 私も混ぜてよ!」
「いや……お前に話しても、正直分からないだろ?」
泣きそうな声色で、カオルは答える。
「そうだよ! 正直分からないけど! いつの間にか二人とも下の名前で呼び合ってるし! 仲良くし過ぎ……はっ!?」
カオルは何かに気付いたのか、徐々に振るえ始め――
「も、もも、もしかして……ふ、二人は、つつつ付き合ってるの?」
「「違う!」」
と、俺とユキは言葉を被らせた。
「ま、待て! どうしてそうなる? 俺達は付き合ってなんかねえよ!」
疑いを晴らす為、必死に抗議する。
ユキも便乗して、
「そ、そうですよ! こんな甲斐性のない人となんか、お付き合いしたくありません! 最悪です!」
「おい」
もうちょっと言い方があるだろうと、突っ込みを入れておく。
「あ、あれ? 二人とも、付き合ってないの?」
キョトンとした顔で、カオルは見つめてくる。
「そ、そうですよ! だから、安心して下さいカオルさん!」
ユキは、カオルを宥めると、
「そ、そうなんだ!」
とりあえず、カオルはホッとした表情になり落ち着いてくれた。
落ち着いたところで、ユキが話し始める。
「カツヤさん、カオルさんと一緒に話し合いましょう。カオルさんにも話を聞く権利はあると思います。一緒に手伝ってくれているじゃないですか。凄く助かってますよね?」
「私って! 世界の終わりの時も、ちゃんと役に立ってるんだね。良かった!」
確かに、カオルには協力してもらってるいるのは事実だ。世界の終わりの時の数少ない協力者の一人である。
それに、隠そうとしたから、以前は苦しい思いをしたんだったな……
「ああ、分かったよ」
「だそうですよ、カオルさん」
「やったー! さすが梅ちゃん! 愛してりゅうよおおお!」
さっきとは打って変わって、カオルは笑顔でユキに抱きつく。
「良いか? とにかく話の腰は折るなよ?」
「おっけー!」
俺達は改まって話し始める。
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