承 蒼き地底を舞う女神より

プロローグ

プロローグ(1/2)

 暗く。

 暗く。

 そして、暗く……

 狭い瓶の中は非常に暗く、更に寒い。

 身体は文字通り凍り付き、身体のどの部位も動かない。

 上半身の鈍い痛みは引き延ばされ、それだけが俺の自我を保つ為の唯一の感覚である。

 死にたいと思っても体が動かず、意識を消し去ろうとしても、痛みのせいで消し去ることが出来ない。

 苦痛が続く地獄。

 いっそ頭がおかしくなった方が楽になれるだろう。

 だが、イかれることすらも許してくれない。

 また必ず、俺は日常に帰るのだ。

 何もない、あの平和な日常に……



「……ッ!」

 俺はベッドから飛び起きる。

 息を荒げ辺りを伺うと、そこは俺の部屋だった。

 朝の日差しと雀の鳴く声が、窓の外から入り込む。この街の歴史書や地図が転がり、紛れもなくこの散らかった部屋は俺の部屋だった。

「……畜生」

 また、あの悪夢を見た。

 いや、夢ではなくあれは現実だ。

 あれは、人類再生を掲げた俺、だ。

 あの時の俺は未だ生きており、時々アイツの意識を共有してしまう。

 アイツは未だあの中で苦しみ続けている。死ぬことも、感情を無くすことも出来ず、意識を保ち続けている。

 俺はすぐに浴室に入り、汗を洗い流す。

「やらなきゃな……」

 怠け癖のある自分に、改めて気合いを入れ直す。

 覚悟したんだ。

 全力でこの世界を変える……アイツを救うと、心に誓ったのだから……

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