第11話 世界の終わり

第11話 世界の終わり(1/8)

 俺が頭を上げた時、窓から赤い光が射し込んでいた。目視すると、そこには見慣れた風景があった。

 赤い空。

 黒い雲。

 轟く悲鳴に立ち込める異臭。

 世界の終わりが訪れたのだ。

「な、なんか空が赤いよ! それに悲鳴が……」

 異変に気付いたカオルは、狼狽える。 

「もう、来たのか……」

 見慣れた光景に、溜息が漏れそうになる。

「……今、何日だ?」

 咄嗟に携帯を開く。

 俺は、梅沢との約束を思い出す。

 一週間後の世界の終わりまでに、答えを出すこと……

 すでに、一週間は経っていたと思う。

 ということは、答えを出さなければ、この世界の終わりで俺の記憶継続の最後になるかもしれない。

「クソ……時間がない」

 悩み過ぎた。

 俺は急いで、外へ出ようとする。

「ちょっと待って!」

 中村が俺を止める。

「どうする気なの?」

 訪ねてくるが、時間が惜しい。

 ……だが、このまま言わないのは、結局今までと同じになる。

「梅沢……っていう奴に会いに行く」

「梅ちゃんに?」

 カオルが反応する。

 そう言えば、ちゃんとこの世界がどうなっているのかを説明していなかった。

「あー……説明してる時間がない。今はとにかく梅沢に会わないといけないんだ。そうしないと、二度と俺が今回の件に関与出来なくなる」

 凄く大雑把に説明する。

 そうすると、中村は睨みながら一つ頷く。

「小倉、クラッキング」

 小倉に一言告げる。

「フヒヒ……久しぶりに腕がなるっすね!」

 すると、小倉は不適な笑みを浮かべて所定のパソコンの前に向かう。

「な、何してんだ?」

 息があった二人に困惑するが、中村が説明してくれる。

「この大学のサーバーに潜り込むの、そこに入ればこの大学施設に関わる電気の通った物は全て遠隔操作出来るのよ」

「お、おい!? そ、それって……」

 俺は目を丸くしていると、

「オールクリアっす! 防犯カメラからエレベーター、電子ロック式のドアまで全部制御可能っすよ!」

 いつになくやる気満々の小倉が声を上げる。それを聞いた中村は、得意げな笑みを浮かべる。

「さあ! これで、この大学はアタシ達の物よ!」

 う……嘘だろ?

「まさか……本当に大学をハッキングしたのか?」

「ハッキングじゃなくてクラッキングだよ!」

 俺の言葉に、カオルがどうでも良い訂正をしてくる。

「アンタ、梅沢って子を捕まえるんでしょ? サポートしてあげる」

「あ、ああ! 凄く助かる!」

「それで梅沢ってどの子、特徴とかを教えなさい!」

 そう言えば、コイツ等と梅沢に面識がなかった。

 ……いや、

「カオル」

「うん! まかせて!」

 すぐ横に、梅沢の友達が居た。

 それじゃあ、もうやることは決まった。

 俺は梅沢に会いに行く。

 そして、マルチ制作研究部は、梅沢の捜索と俺のサポートをすることになった。

 これで、より確実に梅沢の所へ向かえる。

「それじゃあ、行ってくる!」

 皆に背を向け、部室のドアを開く。

「しくじるんじゃないわよ!」

「カツヤくん! ファイト!」

「ぐ、グッドラック……」

 皆から声援を背中に受け俺は走り出した。

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