第5話 空の区切れ目
第5話 空の区切れ目(1/4)
そして、今週の休日。
約束通り大野と二人で出かけることとなった。
現在、俺は大野の後ろから付いて行く形で、縦並びに歩いている。大野は特に変わった様子もなく、何を話すでもなく、待ち合わせの場所で合流した途端「行こうか」の一言で挨拶を済まされそそくさと出発した。
遊びではないのだが、せっかくの休日をこんな無愛想野郎と二人きりなのは寂し過ぎる。
もっとテンション上げて、和気藹々として欲しいとまでは求めないが、せめて何か喋ってもらいたい。
一応、襲われないという保証もないので、スタンガンや防犯スプレーを買ってきたのだが、この意気込みのせいで更に俺は話しかけ辛くなってしまったのだ。少しでも気を許して背中を刺されることがあれば、悔やんでも悔やみ切れない。
死んでも生き返るかもしれないが……
いや、それも確証がないな……
いっそ、コイツに話題を振ってみても良いかもしれない。
「なあ、あの赤い空の……世界の終わりだったか? それ以外のタイミングで人が死んだらどうなるんだ? 例えば、今ここで死んだりとかしたら……」
「死ぬ」
一瞬の間も空かない華麗な即答に、俺は言葉を失った。
「一年前、僕がこの現象に気づいてから、しばらくのことだけど、大学で飛び降り自殺をした人が居たんだ」
そういえば、俺が入学してから数ヶ月後にそんな話題があったことを思い出す。
「その事件の後、例の世界の終わりが訪れた。だけど、その人は死んだままだった」
「生き返らなかったのか?」
大野は頷く。
「その人の自殺の理由は分かっていない。不幸な事故なのかもしれないし、もしくは私生活や学業面で不満があったのかもしれない……」
大野は暗い表情でこちらを向き、
「もしかしたら、僕等のみたいに特殊な状況下に居て、耐えられなくなって身を投げたとか……」
相変わらずの無表情のまま、彼は向き直り、
「正直に言うと、死んでみてどうなるのかは、試したことがないから分からないよ。けど、試すこともお勧めしない。リスクが大き過ぎる。死にたいなら別だけど……」
と、忠告を告げてくる。
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