とある青年の恋話

自由な価値観

　伝えてみなければわからない、なんてよく言うけれど、やっぱり伝えなくても結末がわかることは、伝えない方がいいんだ。

　七年、片想いをしていた。

　別にぼけっとしていたわけでもなく、ちゃんとそれなりの友人関係を築き上げてきた自信はある。

　さあそこから一歩先の関係へ、どう進めばいいかと思案していた矢先のことだった。

　相手の方がSNSでこんな投稿をした。

「私は誰とも結婚しない。」

　ああ、なんて清々しい。

　そんな風に堂々とした芯のあるところに惚れてたんだなぁ。

　でも、だからこそ、実らないものもある。

　だけど、惚れた弱みだろうか。本当に好きだから、相手の価値観を尊重したい。

　単純な話だ。

　相手は嫌だと言っている。ならば、最初からしない。

　僕のこの想いをなかったことにすればいい。

　逆に考えるんだ。

　相手は「誰とも」結婚しないと言っている。

　つまり、今後誰のものにもならないということ。

　ならば、それもいいか。

　これでいいんだ、これで。

　最初からお互いの価値観が合っていなかっただけ。

　間違っても相手を責めることはできない。だからといって、僕が間違っているとも思えない。

　素敵じゃないか。

　それぞれが自由な価値観を持てる、まさに新しき良き時代。

　その自由さをもって、次の恋を探そうじゃないか。

　そうだそうだ、次だ次。次の恋を探そう。

　そうやって前を向かなければ、古き悪しき人間になってしまいそうで。