既知な未知

 青天の霹靂とは、こんなことを言うのだろう。

 青空なんか、どこにもなかったのだけど。


 それは、片思いと呼ぶにはまだすこし照れくさいような、淡い想い。

 その子の話を、知り合いの友達にしていたときだった。その友達も、彼女のことを知っている。

 会話の中で、友達は、唐突に、こんなことを言ってきた。


「ねえ、◯◯と△△のこと、知ってる?」


 ◯◯とは、彼女の名前。

 △△とは、僕と彼女と友達の、共通の知り合いである男の名前。

 僕の、自分でも確信していない想いが、言葉の端々ににじみ出ていたのだろう。

 それを察した友達が、少しだけ申し訳無さそうな声で、言ってきたのだ。

 表現は直接的で無かったにしろ、その意図を察せられないほど、僕は鈍くない。

 だから、間髪入れずに答えた。


「うん、知ってる。」


 嘘だ。

 初耳だった。

 とっさに、強がっていた。

 そんなことは最初から知っていましたよ、と。

 悔しさや嫉妬なんて、何も感じていませんよ、と。

 そう態度で示すように、平静を装った。


 そして、同時に痛いほど思い知らされた。


 ああ、僕は彼女に恋をしていたのだ、と。

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