憧憬の影

 あなたの歌声が。

 あなたの言霊が。

 あなたの想いが。

 あなたの願いが。

 あなたの世界が。


 すべて、愛おしい。


 そのきらめきは儚くて。

 その深淵は果てしない。


 だからこそ。


 ああ、なんて似合わない。

 なんて不釣り合いなのだろう。


 くすんでしまった僕はただ、うずくまることしかできなくて。

 この弱虫を見限るように、あなたは遠くへ行ってしまった。


 でも、それでも、叶うなら。

 撫でられた髪が覚えている、ささやかな手のぬくもりを。

 あの優しさを、もう一度。


 もう、いちど。


 憧憬の光が落とす影の中。

 今日もまた独り、叶わぬ夢を見続ける。

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