第10話術前カンファレンス(3)
説明を受けても、難しすぎて良く解らないような状態だったけど、何とかなる…んだよね??
山本先生に、任せて大丈夫ってことだよね!!
「手術の後、免疫治療を開始します。」
「免疫治療…」
「一般的に、健康な人でも1日に数千個もの異常細胞が生じているといわれています。
癌細胞も、以上細胞のひとつです。」
「1日に、そんなに…?」
「あ、ですが、必ずがんになってしまうわけではありません。
それは免疫システムが常に監視していて、異常な細胞を排除するよう働き、がんとして発症するのを防いでいるからです。」
「そうなんですね…。
でも、癌になってしまうときも、有るのですね?」
「はい、異常な細胞が免疫システムの監視を潜りぬけて分裂を繰り返すと、がんの発症や進行を食い止めることが難しくなります。
がんの中には、免疫細胞の増殖やその攻撃を抑える能力を持っているものもあります。」
「そんな恐ろしいものも…?」
「免疫の力ががん増殖の力を上回るように、免疫細胞を体外で増殖したり強化したりしてから体内に戻し、がんを攻撃しようという治療法が「免疫治療」なんです」
「なるほど…。じゃあ、その免疫治療をすれば…」
「癌に打ち勝つ免疫力を付けることで、あなたのからだの中で、細胞が戦ってくれます。」
「…その細胞も、負けてしまったら…?」
「…再発や、転移といった症状に繋がるでしょう。」
再発……転移………。
「とにかく、手術で癌を取り除かないことには、話になりません。
他の臓器に転移する前に、早急に手術をするのが先決だと私は思います。」
「…なるほど…。
わかりました、山元先生に、おまかせします。よろしくお願いします。」
深々と頭を下げ、命を託した。
同意書へサインをし、手渡す。
「一緒に、頑張りましょう。」
山元先生の言葉が、とても心強く感じた。
「はい、よろしくお願いします。」
席を立ち、部屋を出る山元先生。
私も立ち上がり、深々と再度、頭を下げる。
「大丈夫ですよ、桜木さん。
きっと大丈夫です。」
「はい、ありがとうございます。
子供たちは大丈夫かしら…」
「戻りましょうか。」
部屋を出て、病室へ向かう曲がり角から、もう聞こえてくる…。
ショウの、癇癪を起こした、激しい泣き声。
それと共に聞こえてくる、看護師の金切り声。
「あぁ、やってるやってる…」
病室のドアを開けると、その音に気付いた、ショウとリョウが、駆け寄ってくる。
足元にしがみつき、わぁーと声をあげて泣く。
「大変だったでしょう、子守りは。」
苦笑いでそう看護師に声をかけると、疲れきった顔の看護師が、振り向いた。
「いつもこんな感じなんですか?」
恐怖にも似た目で、足元にしがみつく子供たちを見ながらそう言った。
「声掛けや伝え方を間違えると、こんな感じになりますね」
苦笑いで答える私に一礼をし、逃げるように病室を出ていった。
子供たちの頭を撫で、「ただいま」と言うと、二人を抱き締める。
「母ちゃん頑張るからね。」
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