情景と季語に溢れた淡いパステルカラーのような描写。 触れたものを容赦なく塗りつぶす墨汁を思わせる人の心理。 対照的な二つを妥協なく書き分けることで生じる緩急が面白い。 その比率がどちらに傾こうとも、決して色あせない事は無いのだろう。 無色透明という立ち位置に甘んじていた、ゆきのんの将来がどう色づいたとしても。筆者にはその力量がある。
設定や冒頭を読んでの感情は「琴裏さんって漫画もそういう設定だったな」でした。しかし感情の読み取れない登場人物がいるなど、相違点もあるので今後に注目です。ダイレクトな悪意は人を傷つけ怯えさせ、逆に混じりけのない善意は胸いっぱいに温かな感謝を広げてくれる。作品全体を流れる、時に穏やかで時に冷たい風のような雰囲気は、春先の気候を思わせます。それを上手く文章でも表現できているので、これからの展開に期待が持てる作品です。