第5話 呪われた魂・下

 廊下に立っていた男に案内された。

 二人は、元は稽古部屋と思しき広くて柱のない部屋へと通された。

 稽古部屋では四人が二人を待っていた。

 背筋を伸ばした壮年の男性、ゆったりとした服の妙齢の女、黒装束の眼光の鋭い男、そして経営者と思しき穏やかそうな男だった。

「お呼びたてしてしまって申し訳ない。私はここの経営をしているジフトという者です」

「秘書のスザリエよ」

 女が自分の肩に掛かった髪を払いながら言った。

「相談役のクラメスだ」

 壮年の男が腕を組んだ。

「用心棒のクイノンである」

 黒装束の男は油断なく二人を観察していた。

「ご存知でしょうが、ボクはリーフ、こちらは相棒のリンです。それで、話とは一体何なのでしょうか」

「貴方がお持ちになっている、その両手剣——否、魔剣について幾つかお尋ねしたいことがありまして」

 ジフトの視線が、リーフの背中の魔剣に向けられた。

 リーフの目尻がひくりと動いた。リンも指先をぴくりと動かした。

「いつ、気付きましたか」

 リーフの知る限りでは、ギルは魔剣だとばれるような目立ったへまをしていなかった。リーフに乗り移っている間しか口を開いていないし、リンとの会話も盗み聞きをしている者がいないことを確認した上で行っていた。

 事前に細かく指示をしておけば、ギルは極めて優秀だった。頭の出来は間違いなく馬鹿だったが。

 唯一、戦闘の傾向だけはどうしても毛色の違いが目立ってしまっていた。しかし、戦いに没頭するあまり平常とかけ離れた行動に走ることはまま見られることなので、そんなに奇妙には映らない筈だ。

「貴方がここに来たとき、既に分かっていました。いくら普通の剣の振りをさせても、分かる者には分かってしまうのですよ」

「魔剣の存在が分かるってことは、つまり」

「ええ、あたし等もあんた方と同じく、魔戦士タクシディードってことね」

 スザリエが口を開いた。

「それとも、半魔スコタード半獣ネロッドという呼び方が好みかな?」

——半魔っつったらモンスターみたいじゃねぇかよ。

 ギルが唐突に会話に割り込んだ。既に正体が知れているのなら、ずっと黙っていても仕方が無いからだ。

「随分と、明瞭に言葉を解す剣であるな」

 クイノンがギルを睨みつけた。腰に帯びた直刀に手をかけ、既に臨戦態勢に入っている。

——で、テメェ等の狙いは一体何なんだよ。呼びつけてお喋りして終わりってわけじゃねぇだろ。

「貴方達は、魔剣とはどんな存在なのか知っているか」

 クラメスはギルの言葉を無視して二人に問いかけた。

「モンスターと人が対等に渡り合うことの出来る、唯一の武器だったと聞いています。それ以外のことはボクには関係ありません」

 リーフの声はいたって平静だった。

「その様子だと、少なくとも小耳に挟んでいるようであるな」

 クイノンが鼻を鳴らした。

「魔剣が、呪われた魂を素材にした武器だということを。そして、我等魔戦士もまた、その魂を受け継いでいるということを」

 リーフとリンは、無言で肯定した。

 魔剣と魔戦士の関係について、二人はギルから大まかな話を聞かされていた。

 魔剣は通常の武器とは一線を画した破壊力を持っている。

 それもその筈、魔剣はモンスターが出現する以前に世界の覇権を握っていたという神獣を素材に作られた武器だからだ。

 しかも、素材にされたのは肉や骨だけではなかった。魔剣には、神獣の魂そのものが封じ込められ、武器固有の異能の原動力となっていた。

 魔剣一本一本が魂の牢獄と言っても過言ではない。

 魂が朽ち果てるまで続く幽閉生活の中で、人間や動物の血肉を啜って一時の快楽と力を求めるだけの、呪われた存在——それが魔剣の正体だった。

 そして、魔剣とならなかった神獣の一部が人間と交わった結果生まれた、異能の持った種族が魔戦士である。ギルがリーフのことを混ざり物と形容したのも、この事実からきていた。

 則ち、魔戦士と魔剣は存在が近しいがため、意思疎通ができるのだ。

——随分な言い方じゃねぇか、ご先祖様に対して敬意とかねぇのかよ。

 ギルは四人を揶揄した。

「生憎、堕ちた神を敬う趣味はなくてよ」

「あ、それだけはすっごく同意したい」

 スザリエがすました顔で言い放った言葉に、リンは反射的に目を輝かせた。

「リン、向こうに感化されるな。それで、用件は?」

「その魔剣を引き渡してもらいたい」

 ジフトの言葉は、リーフが予想したものだった。

「お断りします」

「無論、対価は用意する。見合うだけの金でも、協力関係でも、好きなものを望むといい」

「必要ありません」

 リーフは申し出を全て切って捨てた。

 見かねたのか、クラメスが一歩前へと出た。

「あんたも分かっているだろう、そんな強力な魔剣に頼っていたら先は長くない。特に憑依霊デモニアは人の魂と身体の結束をおかしくさせて、持ち主の身体を蝕んでいくんだぞ」

「碌に生きてない者に、先も何もないでしょう」

 リーフの眼光に、クラメスは押し黙った。壮年の男が、まだ歳若い剣士に気圧されていた。

「……そうか、それが望みか」

 ジフトは息を吐いた。

「貴方は復讐がしたいのですね。そして、そのまま自害するつもり、ですか」

「えっ」

 リンは目を見開いて、リーフの横顔をまじまじと見つめた。

「ねえ、今の話って本当なの!?」

「さあね。それより……来るぞ」

 リーフは魔剣ギルスムニルの柄に手をかけた。ギルもやる気のようで、リーフの手首を蛇が這うようなぞわりとした感覚が走った。

「交渉決裂、か」

 ジフトの嘆息と共に、スザリエとクイノンが前へと出た。

「力の強すぎる魔剣は、今となっては災厄しかもたらさない。それらを管理するため、私達は魔狩人を結成した」

 スザリエの手には流星錘、クイノンも直刀を抜いていた。

「応じないのならば、仕方が無い。力ずくでも回収させてもらう」

「全く、後で話を詳しくしてよね」

 リーフが魔剣を抜き、リンも拳銃を構えた。

 スザリエが流星錘を振り回すと、白い冷気が周囲に漂い始めた。そのまま、冷気を纏った先のおもりをリンに向かって投擲。同時に、クイノンがリーフに突進した。

 鎖が拳銃に絡みつき、銃身に一瞬にして霜が張った。

「ひゃっ!」

 あまりの冷たさにリンは声を上げた。だが、鎖の巻き付いた銃を放さずにぐい、と引っ張った。その馬鹿力にスザリエは持っていかれそうになるも、すぐに鎖が解けて体勢を立て直した。

 一方、がぎんっ、と魔剣同士がかち合った。リーフギルの顔に壮絶な笑みが浮かんだ。

 ほぼ互角の打ち合いが続き、持久戦に持ち込むかと思いきや、急にリーフギルが押され始めた。突然、クイノンの剣が重くなったのだ。

騒動霊ポルターか」

 リーフギルが面白くなさそうに唸った。

 魔剣は宿る霊の性質から、大きく二つに分けられる。

 一つは、生物に意識を投影して操る憑依霊。使い手の身体を乗っ取って動き、ギルはこちらに区分される。

 もう一つは、物質に介入して操る騒動霊。物質を手足のように動かし、特定の宿主を必要としないタイプだ。

 男の直刀は騒動霊型魔剣であり、打ち込む瞬間に刀身に力をのせてより大きな力を叩き込むことを可能にしている。

 厄介な使い手だ、とリーフギルは無意識のうちに舌打ちした。

 リンは凍りついた拳銃を放り投げ、スザリエを正面から殴りにかかった。スザリエは流星錘を投げて牽制する。それを奇跡的に至近距離で錘を避け、リンは顔面に肘鉄を叩き込もうとした。リンの怪力であれば、一撃で繊細な女の顔はミンチになる。

 リンの豪腕はスザリエの鼻先を擦り、後一歩のところで上から降ってきた錘に下へと叩き落された。

「……っ!」

 腕に錘の鋲がめり込み激痛に顔を歪めるリンを、スザリエは鎖を巻きつけた拳で殴り、更に膝蹴りを腹に叩き込んで吹っ飛ばした。

 リーフギルも後退して吹っ飛ばされたリンの身体を左腕で受け止め、勝手に飛んできて追撃してくる流星錘を剣で弾き返した。

 流星錘もまた、騒動霊の魔剣だった。

 この一手で、ギルは相手のやり方を殆ど理解していた。使い手への負担が少ない騒動霊を弱らせ、完全に従属させて武器としている。同じ魔剣として、気分の悪い扱われ方をされていた。

「大丈夫かよ!」

 リーフギルの問いに、リンは咳き込むことで応えた。流星錘の関節への直撃は避けられていたが、革製の上着の袖は鋲で引き裂かれ、血が滲み始めていた。

「まずいな」

 実際、二人は圧倒的に不利だった。リンは〈森狼〉を持っていない上に、腕を負傷してもはや戦力外。

 対して、相手は手練の魔戦士が二人で、しかもまだ後ろで二人が全く手を出さずに控えている状態だ。

 このまま戦闘を継続しても、リンが死傷する可能性は極めて高い。

 もはや二人が打てる手は一つ。

 リーフギルは床に剣を叩きつけた。朱色の火花が散り、部屋中に粉塵が巻き起こった。

「逃がさないっ!」

 スザリエは即座に反応し、流星錘を煙幕に向かって繰り出した。


  シャアッ!


 白煙の中から飛び出した影が空気を裂いて錘を砕き、スザリエの首筋に巻きついた。スザリエの肢体から力が抜け、倒れ臥した。

「スザリエッ!」

 クイノンが駆け寄り、ぴくりともしないスザリエを抱き上げた。僅かに遅れてジフトとクラメスも駆け寄った。

 首筋に巻きついていたものを見て、クイノンはぎょっとした。

 それは、黒い鱗を光らせた蛇だった。首輪のように喉を締めつけ、うなじに牙を突き立てていた。

「このっ……!」

 クイノンがやけになって蛇を掴むと、あっさりとその胴は千切れてしまった。蛇の胴は粉々に砕け、黒い欠片になって散らばった。欠片は朱色の蒸気となって消え、後には何も残らなかった。

「人形の術を使う魔剣だと……!」

 クラメスは息を呑んだ。

 異能の応用技として、術というものがあることを彼らは知っていた。彼らもごく簡単なものなら扱うことができたが、ここまで高度な技を扱える魔剣に出会ったことはなかった。

「これは、何が何でも捕縛しなくては……頼みましたよ、ジナ」




「リン、歩けるか」

「う、ん……大丈夫」

 両腕で抱き上げていたリンを立たせ、リーフは重みで軋んだ手首をさすった。

 ギルが憑いている間、リーフは普段よりも身体能力が上がっているように見えるが、実は全く変わっていない。

 力の込め方や重心移動、呼吸法といった身体捌きに関してずば抜けているギルが、普段リーフが出来ない技術を再現しているだけなのだ。そのため、ギルが行った多少の無理は全てリーフに跳ね返ってくる仕組みになっていた。

 それでも、リーフの頑丈さをもってすれば、十分に耐えられる程度の負荷ではあったが。

——悪ぃ……後は、頑張れ。

「どうしたの?」

「時間稼ぎに力を使い果たしたらしい」

 慣れないことをして、ギルの意識はすっかり弱まってしまっていた。今は視界の端を飛ぶ羽虫程度にしかリーフの意識に引っ掛からなくなり、身体の主導権を完全に放棄している。

「急げ、外に出るまで油断はできない」

 リーフはズボンの裾に仕込んでいたナイフをリンに渡し、自分もまた右袖から引き抜いたナイフを握った。

 二人は廊下を小走りし、闘技クラブの外を目指した。

 途中で出会った相手には、向こうが事態を把握するまえにリーフが当て身を食らわせ、一息で命を奪っていった。複数人相手ではリンがナイフの柄で殴って作業を手伝ったが、基本的にリーフが一人でこなしていた。

「リーフ、ここから出られるみたい」

 死体を床に転がしている最中のリーフの後ろで、リンは拳一発で扉の鍵を壊した。扉の隙間からは、夜の外気が流れ込んでいる。

「待ち伏せは?」

「動いているものはないっぽい」

 そうは言ったものの、リンは慎重に外の様子を半身で窺い、誰もいないことを改めて確認してから外へと出た。リーフも、背後を気にしながら後に続いた。

 二人が出たのは闘技クラブの裏口で、劇場の入り口がある大通りから少し脇に入ったところにある細い路地裏に続いていた。夜ということもあって人通りはない。

「行くぞ」

 周囲を確認し、リーフはリンに手で合図をした。一直線に大通りへと向かって駆ける。ばたばたと足音が響き渡った。

「いいえ、逃がしません」

 背後から降ってきた声と、急速に接近してきた気配に気付き、リーフは振り向きながらナイフを薙いだ。

 当てずっぽうで振りかぶったにもかかわらず、ナイフは襲いかかってきた何かに命中した。しかし、逆にナイフは折れて右腕を鋭い刃が掠めた。

 襲撃者は鳥の形をしていた。烏ほどの大きさの、赤橙色の鳥に似た何かだった。羽根を縫い合わせた翼と、鋭い二重の鉤爪、ナイフを折った鋼の嘴、そして生気のない石の瞳——明らかに生物ではなかった。

 鉄の鳥は一度高く舞い上がり、再びリーフに襲いかかった。

 狭い路地では満足に逃げることも出来ず、嘴はリーフの外套の右肩を裂いた。魔剣を背負うための帯が大きくずらされ、からんからんと音を立てて魔剣が地面に投げ出された。

「しまった!」

 リーフの目の前で、鳥が鉤爪で魔剣の柄をしっかりと掴んだ。

 ギルもこれにはさすがに焦った。

——……ッダァ、クソッ! 野郎っ!

 鳥が飛び立つ瞬間に、ギルは残った力を振り絞り、奇声を発しながら魂だけでリーフにしがみついた。

 勿論、魂だけなのでそれで抵抗になる筈もなかった。寧ろ、悪い結果をリーフにもたらした。

「ぐっ」

 ギルの魂が物理的に引き剥がされるのと共に、リーフの身体から力が抜け、その場に膝をついた。

 離れまいとするあまり、ギルはリーフの内面に強固にしがみついて、体力をごっそりと奪い取ってしまっていたのだ。

 抵抗むなしく、魔剣を抱えた鳥はリンの伸ばした手を搔い潜って飛び立った。重たい両手剣を掴んでも尚軽やかに空を飛ぶ鉄の鳥は、劇場の二階の窓へと飛び込んでいった。

「くそ……うぐっ」

 リーフは鳥を追おうと立ち上がったが、襲ってくる脱力感には勝てず、よろめいたところをリンに支えられた。

「ねぇ、一旦退こう。ね?」

 ぼろぼろになってもまだ目をぎらつかせているリーフに、リンは宥めるように言い聞かせた。

 二人の完全敗北だった。




 血のような月が照らす廃墟の広場に、死屍累々が転がされていた。数は軽く見積もっても百を超えている。

 死体の多くは手足を欠いていて、中には頭がとれているものもあった。手足が残っていても、腹の中身が搔き出されていたり、指が千切れていたりと、まともな状態なものはひとつとしてない。

 その地獄ともとれる景色の中で唯一人、二本の足で地面を踏みしめ、欠損のない両腕を天に伸ばした男が立っていた。

「全く以て、本当に君は学ばない性格のようだな。もう少しまともな策を練られると思ったんだが」

 役者のような大仰な手振りで悲嘆を示し、男は背後を振り返った。

「煩ぇ、俺が馬鹿なのは今に始まった話じゃねぇし」

 男の背後に、ひと際大きな死体の山があった。積まれている死体はどれも頭を半分潰されていて、脳髄を垂れ流していた。

 死体の山の上には、丁字に組まれた木材が突き刺さっていた。壊れてしまっているが、それは元々絞首刑台の一部だった。

 その、もう用を為すことの無い絞首刑台の上に、人影が座っていた。

 片膝を立て、背中を丸めているその姿は、ふてくされているようにも見えた。

「これで一体何度目だい? 同じ過ちを繰り返し続けて、悲しくならないのかい」

「あーそうだよ俺は馬鹿だよ、千年に一人の大馬鹿野郎だよ! っつーか、さっきから俺の心を見透しやがって、テメェは一体何がしたいんだよ。奴らの差し金か?」

 影の言葉に、山になっていた死体が一斉に目を開き、めいめい一つずつしか持っていない目玉で男を凝視した。

 普通ならひっくり返ってしまっても仕方がないくらいの異常な光景だったが、男は平然としていた。

「君の好きなように考え給えよ。一つ言っておくと、今の俺は君の味方でも敵でもない」

「何もしねぇってことかよ……嘘臭ぇな。俺が招いてねぇのに此処にいるってことは、テメェも魔剣おなじってことだろ? そして、俺は敵地のど真ん中でこうしてテメェと仲良くお喋りしてるってわけだ」

 影の口と思しき場所がばっくりと割れ、くけけけけ、と耳障りな笑い声が響いた。

「これでテメェが敵じゃねぇってんなら、俺は両手を飲み込んだっていいぜ?」

 狂ったように笑い続ける絞首刑台の上の影は、身体を仰け反らせて相手をぎょろりとねめつけた。

「もう誰も信じる気はないのか、ギルスムニル」

 名前を呼ばれ、笑い声はぴたりと止んだ。

「テメェが俺の疲れにつけ込んで、何処まで覗いたかは知らねぇよ。ただ——」

 低く落とし込んだ声色で、影が——ギルの本体たましいが淡々と告げた。

「俺は、もうニンゲンに期待するのはやめたんだ。だからな、勝手に助けて、勝手に絶望して、勝手に捨ててやるのさ」

 男はギルの片方しかない朱色の瞳を黙って見つめ返した。ギルの半分潰れた顔は、絞首刑台の礎になっている死体達と全く同じものだった。

 ふと、ギルは急に不快そうに顔を歪めた。

「ちっ、おいおい俺に触ってんじゃねぇよ!」

 ギルの咆哮は、魔剣の表面に朱色の波動を起こした。

 ばちっ、と音を立て、今まさに巻かれようとしていた封印用の鎖が弾けとんだ。

 リーフから体力をもぎ取ったおかげで、ギルにはまだ狩人達が仕掛けてくる弱体化攻撃に抗うことができた。

 狩人達がすぐに次の手を打ってこないことを確信し、ギルは少し脱力した。

 いつの間にか、男はいなくなっていた。

「救出は早めに頼むぜー、ご主人様よー」

 ギルは消耗をなるべく減らすために内面へと引きこもっていた。ひたすら耐え忍び、救援を待ち続けていた。

 不思議と、二人が救出に来ることは容易に信じることができた。




 空の皿がテーブルの上に積み上げられていった。

 既に四人前の肉料理を平らげているというのに、リーフの食欲はまだ留まることを知らないようだった。

「ちょっと食べ過ぎじゃない?」

 一心不乱に肉を噛みちぎるリーフの姿に、リンも若干退いていた。

 リンは腹を蹴られたせいか、いつもよりも食欲がなかった。

「まだ力が戻らない。怪我を治すためにも、もっと必要だ」

 そう言いながら、リーフは薄いエール酒を煽った。間髪開けずに再び口の中へと料理を突っ込む。

「奴らも言った通り、ボク達には人間じゃないモノの血が混ざっている。だからボクは食べればその分、丈夫になれる」

 そう言いながらリーフは食べ終わった皿をまた積み上げて新しい皿を取った。

 最後の皿の中身も胃袋に詰め込んで、ようやくリーフはフォークをテーブルの上に置いた。空の食器はおおよそ六人前、女の体に収まるのが不思議な量だ。

「後は一眠りすれば、全快だろう」

 食べ過ぎて腹回りがきつくなったのか、リーフはベルト周りをいじった。

「腕の傷は?」

「ギルにやられた分なら、とっくに治っているけれど」

「そっちじゃなくて、あの鳥に引っ掻かれたところ」

 ああ、とリーフは外套の破れた箇所を手で押さえた。

「忘れていたよ、あまりにも擦り傷過ぎて」

 リンは信じられない、という顔をした。

「ナイフごと持っていかれてなかったっけ」

 リンは確かに、リーフがナイフを折るような一撃を腕に食らったのを見ていた。しかし、同時にその後の出血がそんなに酷いように見えなかったのを思い出した。

「前よりも丈夫になっているんだよ、ボクは。あの程度の弱い魔剣なら、人の爪で引っ掻かれたのと同じだよ」

 尤も、ギル相手ならまずいだろうけれどと、リーフは軽く肩を竦めた。リンは顔を曇らせた。

「何か……段々人間離れしていってるよね、私達」

「元からそうだったじゃないか」

 リーフは涼しい顔だった。

 二人が出会ったときには既に、リーフは並外れて身体が丈夫であったし、リンは見た目に合わない怪力の持ち主だった。

「それはそうだけど」

「存外、西の世界にはまともな人間なんてそんなに存在しないのかもしれない。いや、存在できないと言った方が正しいかな。何にもできない弱い奴は、モンスターに食われて終わるだけだ」

「……そんなもんかな」

 リーフは椅子を蹴って立ち上がった。

「この話はもうやめよう。さっさと宿に戻るぞ」

「ねえ」

 リンがリーフの外套の裾を引っ張った。

「あいつらが言ってた、死ぬつもりっていうのは、本当なの?」

 リーフを見上げるリンの目は不安で揺らいでいた。リーフはその目を真っ直ぐに見つめ返した。

「少なくとも、ボクには死ぬくらいの覚悟をもって挑まなければいけないことがある。それだけだよ」

 掴んだ手を振り払い、リーフは一人歩き出した。




 その日、劇場での闘技大会は開催されていなかった。所属剣闘士の負傷や疲労を鑑みて、連日の試合は控えられているのだ。

 当然、劇場にいる者は少ない。剣闘士は宿舎で鋭気を養い、売り子達は出払ってしまっている。

 他の裏方達は雑務で出入りしていたが、いつもと比べると非常に数は少なかった。しかし、これには別の理由があった。先日執り行われた闘技大会の優勝者が何を思ったのか暴れ出し、出会った人物を誰彼構わず殺害したからだ。

 優勝者は殺し回った挙げ句に武器を置いて逃亡、賞金は持ち逃げされた。幸い、舞台裏での出来事のため客に被害は出ず、事も大きくならずに済んだ。

 殺された者は十人にも届かなかったが、犯行の猟奇的な様と剣を残すという奇怪な行動を気味悪がり、相次いで暇をもらっていた。

 日が傾き始めた頃、静かな劇場の正面入り口でどかんと大きな音が二度した。

 何事かと人がエントランスに集まり、即散り散りになって逃げ出した。

 扉をこじ開けて侵入し、そして無理やり閉ざしたのは、物騒すぎる出で立ちをした二人組だった。

 一人は耳付き帽子を被り、耳当てもしっかり装着したリンだった。

 リンは、肩に愛銃の森狼と物騒なものがぎっしりと詰まった袋を掛けていた。右手に綿で栓をされた怪しい瓶を、左手に火口を持ったまま、にこにことした笑みを顔に貼付けていた。

 もう一人は、白いシャツ姿のリーフだった。

 常に身につけていた黒い外套はどこかに置き去り、剣士にしては貧弱さが目立つ体格を露わにしていた。袖に仕込んでいた暗器は剣を吊るしたベルトに剣と同じように挿してあった。

「リン、一気に蹴散らすよ」

「はーい」

 リンは手に持った瓶の口に火口を近づけて点火した。そのまま何人かが逃げ込んだ先の扉につかつかと歩み寄り、蹴破って中に瓶を投げ込んだ。

 途端に、部屋の中に赤い炎が煌々と燃え上がった。火のついた油を浴びた者が絶叫を上げる。

 他の部屋にも同様にして火炎瓶が投げ込まれ、徐々に火の手は劇場を飲み込んでいった。

 単調な作業を続けるリンの傍らで、リーフはリンの行動を止めようとする者を端から斬って捨てていた。

 エントランスが完全に炎に包まれた頃合いを見計らい、二人は扉を完全に閉ざして舞台のある大広間へと進んだ。

「これで、背後は安心ね」

 リンは空っぽになった袋を床に落とし、森狼を構えた。

 今、二人が行っているのは掃討戦だった。片っ端から敵勢力を潰し、徐々に敵の移動範囲を絞っていく。最悪、ギルが見つからずに炎にまかれたとしても、燃え跡から回収すればいいと考えていた。

「声が少し震えているけれど、堪えているのかい」

 気丈に振る舞おうとリンが無理をしていることに、リーフは気付いていた。

 リンが、明確な敵以外に死を振り撒いたのはこれが初めてのことだった。

「大丈夫、敵なら頭を吹っ飛ばせるから」

 リンは深呼吸をすると、森狼に弾を込めた。対モンスター用の一発弾ではない、対人用の散弾だ。

「なら、始めようか」

 リーフは剣を収め、正面に向かって全力で走り出した。同時に炸裂音が響き渡り、床が爆ぜた。

 二人が立ち止まっていた場所は大広間の出入り口で、左右に女神を象った彫像が置かれ、頭上に築かれた段にも獅子の像があった。

 これらの彫刻群は、背後からの熱気を我慢して少し身体を後ろに引っ込めていれば、正面以外からの攻撃を防ぐ障害物としての役割を果たしてくれた。

 そんな安全地帯から飛び出したリーフに、攻撃が飛んでくるのは必然であった。

 走り続けるリーフの頭上を弾丸が掠めた。


 既にリーフには、敵が何処にいるのか全てお見通しだった。相手が優秀な狙撃手であるため、リーフに弾丸は一発も当たらない。殺意の方向と弾丸の軌道が一致しているからだ。

 鬱陶しい弾の雨を搔い潜って、リーフは広間の反対側へと飛び込んだ。

 予想通り、開けた扉の先ではクイノンが立ちはだかった。クイノンは直刀の魔剣を振りかざすが、あからさまな殺意を放つ攻撃はリーフに擦りもしない。

「よくも、よくもスザリエをっ!」

 それでもクイノンは攻めの手を緩めない。フェイントを織り交ぜられた刃がリーフに幾度も迫った。しかし、その度にリーフは紙一重で斬撃を躱した。

 リーフはクイノンに足払いをかけた。闘技大会でその技を知っていたクイノンは後方に跳びずさって回避した。

 そして、クイノンは背後からの轟音に倒れ臥した。

 リーフから少し遅れて駆けつけたリンが、散弾をクイノンの後頭部に撃ち込んでいた。小さな弾粒はクイノンの首筋を大きく抉り取っていた。即死である。

 最初から、リーフにはクイノンと正面からやり合う気などなかった。強力な魔剣の一撃を受け止める強度は只の剣は持ち合わせていないし、暗器で隙を突き一撃で仕留められる程容易い相手でもない。

 元から勝負はリンに丸投げしていた。リーフは只、狙撃手の弾を一度撃ち尽くさせてリンに道を作り、確実に仕留められるようお膳立てをしたのだ。

「これで残るは四人——いや、三人か。どうやら、一人は昨日ギルが仕留めていたみたいだ」

 リーフは視界外の敵の数を正確に把握していた。

 大きな音が薄い壁を抜けてしまうように、明確なぎらついた敵意は距離が多少開いていてもリーフには手に取るように分かった。

「一人は上、二人はこの階にいる。上の奴は移動中だけれど、二人は全く動かない」

 視線を彷徨わせ、リーフは位置関係を合わせていく。

「おそらく、一人で行動しているのが狙撃手で、二人がいる場所にギルがいる」

「根拠は?」

「あれに無遠慮に触って、無事でいられると思うかい? 自称最強の憑依霊を、数日で破壊できるとでも? おそらく悪さをしないように監視をしている筈だ」


 リーフはギルの救出に向かい、リンは狙撃手の相手を任された。

 リーフが敵意を追い、辿り着いた先はあの稽古場だった。

 リーフが蹴破った扉はまだ修復されておらず、ぽっかりと出入り口が開いたままになっていた。

 何の警戒もせずに、リーフは中に堂々と入っていった。

 稽古場の中で待っていたのはジフトと、見た事のない少女だった。ぱさぱさの褪せた色合いの髪を束ね、背中に鉄の翼を背負っている。

 少女が、あの鉄の鳥の使い手であることは容易に察することができた。

 二人の背後には、鎖で厳重に縛られた魔剣ギルスムニルが横たえられていた。

「取り戻しに来てしまいましたか」

 半ばリーフの逆襲を予想していたように、ジフトは言った。

「此処まで来たってことは……」

 少女が口を開いた。

「立ちはだかった者は皆、殺しました」

 ジフトの顔が険しくなり、少女の顔からは血の気が引いた。

「そんなっ、クイノンまでっ」

 少女の頬を大粒の涙が伝った。

「ベナ、落ち着け」

 ジフトは少女の肩に手を置き、落ち着かせようとした。だが、少女はその手を振り払った。

「よくも……許さないっ!」

 声を荒げたベナの背後で、ばさり、と音が聞こえた。

 咄嗟にリーフが両腕を顔の前で交差させると、鋭い爪が手首を掴んだ。

 あの鳥の形をした魔剣が、一瞬でリーフの眼前にまで距離を詰めていた。顔を庇うのが少しでも遅れていたら、目玉を抉り出されていただろう。

 鳥はリーフを引きずり、壁に叩きつけた。

 続いて、今度こそ目を抉り出そうと嘴がリーフの顔に突き出される。

 リーフは怯むことなく嘴を手のひらで受け止め、前のめりになって鳥を抑え込んだ。

 鉤爪から腕を抜き、翼の根元に暗器を突き立てた。魔剣は耐久性に優れるとはいえ、可動部の繊細な造りはまだ弱いと読んだ。

 使った暗器は刃が折れて使い物にならなくなったが、翼の関節に傷を入れ、刃物の欠片を噛ませることに成功。

 それでもまだ腕にしつこくしがみつく鳥を踏みつけて引き剥がし、リーフは剣を抜きながらベナに突貫した。

「ひゃっ!」

 ベナは怯えて悲鳴を漏らした。わけが分からなかった。鉄さえも抉り取る魔剣の爪を食らって、どうして未だにリーフが血塗れになっていないのか。

 ベナを守る為に、ジフトは剣を抜いてリーフに立ち向かった。鋭い突きが真正面からリーフを狙った。

 リーフはそれを素手で掴んで逸らし、身を捩ってジフトの側面に回る。しかし、驚愕するジフトに目もくれず、剣を捨て、その後ろの魔剣ギルスムニルへと手を伸ばし——掴んだ。

 朱色の火花を散らして、鎖が弾け飛んだ。

「残念だったな、くそ野郎共」

 両手剣を肩に担ぎ、リーフギルは顔に不遜な笑みを浮かべた。

「俺を抑えりゃリーフが手も足もでねぇと思ったか? 残念! テメェらが真っ先に始末しとくべきだったのはこっちの方だったのさ」

 くけけけけ、と耳障りな声でリーフギルが嗤った。

「硬化能力か」

 ジフトは剣を構え直しながら言った。刃を掴む瞬間、リーフの掌が白く染まっていたのを見ていた。

「ちょっと違うなぁ。コイツの能力は純粋な〈守り〉だ。息の根を止めようと思ったら、昔の俺よりもしぶといんじゃねぇの」

 急に、ん? とリーフギルは首を傾げた。

「っつーことは、あれか。もしかしなくても、いけるのか」

「何の話だ」

 嫌な予感がするリーフギルの行動に、それでもジフトは尋ねざるをえなかった。

「いや、コイツの身体なら、俺もかなり本気を出しちまっても大丈夫な気がしてきたんだよな。ちょっと本気出してみるか」

 リーフギルは口の左端をにいっ、とつり上げた。魔剣の表面で黒い光が弾ける。

 ジフトの背筋に震えが走った。

「世話になったし、ひとつ見せてやるか——」

「ジフトさんっ」

 ベナがリーフギルとジフトの間に割って入った。

 壊れかけた翼を必死に動かし、鳥もギルに向かって突っ込んだ。

「神の雷ってやつをなあっ!」

「危ないっ——」

 リーフギルが剣を薙いだ時、全てが終わっていた。

 炸裂した黒い雷が、魔剣の鳥とベナを両断していた。涙に塗れた顔は右目寄りで二つに割られ、小さい方の頭蓋が床に落ちた。つられて切断面から脳漿が零れ落ち、鮮血を僅かに薄めた。

 ジフトも右腕を胸筋の一部と共に落とされ、ベナの大きな方の欠片を胸に抱いて血の海に沈んだ。

 ちっ、と舌打ちが漏れた。

「幻覚、いや、霧の目眩しか。命拾いしたな、狩人さんよぅ」

 ギルは二人共屠るつもりで雷を放った。しかし、少女の捨て身の術が男の命を救っていた。ベナの持つ能力は、水に関係する錯視だったようだ。

 狙いが適当だったのも幸いし、ジフトは重傷だったが即死には至っていなかった。

 そして、驚くことにまだジフトには意識があった。ジフトもまた、なかなかにタフな男のようだった。

「ま、しかし」

 ギルはやる気無さげに上を見た。天井には大きな亀裂が走っていた。足下にも、同じような跡が刻まれている筈だ。

「建物ごと潰れて燃えちまえば、一緒だよな」

 劇場の柱はあちらこちらで悲鳴にも似た軋みを奏でていた。木材が火で炙られて爆ぜる音と煙の臭いも感じられる程に迫ってきている。

「じゃあな、いつか混沌の底で会おうぜ」

 リーフギルは落ちていたリーフの剣を拾うと、くるりと回して鞘に収めた。魔剣の帯をつけていなかったので、肩に担いでジフトに背を向けた。

 その一瞬、リーフギルの気が緩んだ。

「この……糞がっ!」

 最後の抵抗とばかりに、ジフトは残った左腕の近くにあった鳥の魔剣の欠片を握りしめ、投げた。リーフに斬られ、鋭く尖ったその切っ先はリーフの背中に吸い込まれるように真っ直ぐと飛ぶ。

 リーフギルは瞬時に反応し剣を叩き落そうとしたが、僅かに時間が足りなかった。守りの力を使えないリーフの脇腹に、無情にも剣が突き刺さり——切っ先で止まった。

 魔剣の欠片を投げることに力を使い果たし、ジフトの目は既に焦点を失っていた。

——あーあ、助けてやるつもりはなかったのに。

 どこからか、声が響き渡った。

「テメェ、いつの間に」

——今回だけは、特別だぞ。

 欠片を阻んだのは、リーフと同質の白い結晶だった。




 昨夜、町の一角で火災があったにもかかわらず、エスペの朝はいつもと変わりがなかった。

 朝一番の乗り合い馬車が城門を抜け、南へと進路をとった。

 馬車はこれから緩い坂道を延々と登り、山間を抜けていく。

 山間のその先にあるのは、孤高の宗教国家ギリスアン——リーフの最終目的地である。

 リーフとリンは、いつもと異なる格好で馬車に乗り込んでいた。

 リーフは黒い外套をしまい込んでリンの上着に袖を通していた。外套よりも身体の線が見える格好だが、何故か普段以上に男らしく見えた。

 リンは、リーフに渡された修道服を着ていた。足首まで隠れるような黒い長袖のワンピースに、真っ白な付け襟の上からスカーフを巻いたその姿は、清楚な教徒に完璧に擬態していた。

「いよいよ、ギリスアンかぁ」

 馬車の後ろから顔を出し、リンは呟いた。

 朝一番ということもあって、乗り合い馬車は二人の貸し切り状態だった。これから幾つかの村でも人を乗せていくので、次第に人は増えていくだろう。

「そうだね」

 リーフはいつもと全く変わらない声音でぼそりと相槌をうった。

 リンが顔を盗み見ても、特に変わったところは見られなかった。

「……」

「……」

「ねえ、前から聞きたかったんだけど」

「何を」

「リーフは、私のことをどう思ってるの」

「君はどうなんだい」

「私はっ……その、好きだよ。仲間としてっ!」

 顔を真っ赤にして、リンは言葉を絞り出した。

「そうなんだ」

「ねえ、それで」

「分からない」

「え?」

「ボクには分からない、ボクが」

 リーフがリンの顔を見つめた。

 感情の薄過ぎる人形のような瞳に見つめられ、リンの火照っていた顔も徐々に冷めていった。

「君達のために死ぬことができるのか」

 戦場に立っていないリーフの目は、いつも虚ろだった。何事にも拠り所を持てない、モノの目だった。


 その時、リンは悟ってしまった。

 リーフが自分のために生きていないことを。

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