句読点のない 奥ゆかしい手紙

前話で私が書いたお悔やみ状に、奥様から御返事の手紙を戴いています。『、』や『。』が無く、また段落も無い古来からの手紙の書き方です。丁寧で美しく読みやすい字で、三枚に渡って書かれていました。


封筒の消印が1991年です。大切に置いています。

こちらの文章の奥ゆかしい言葉遣いも、今ではもう使われないものです。

『㐂』は『喜』の草書体です。


…………


朝夕は肌寒さを覚え めっきり秋めいて参りました


お元気にお過ごしでいらっしゃいますか


過日は主人死去に際しまして 御厚心をいただき 御芳情の程 有難く厚く御礼申し上げます


又奥様よりお心こもれるおはがきを頂戴致し涙ながらに拝読致しました


主人もどんなにか㐂んでいる事でございましょう


生前中は大へんお世話様になりありがとうございました


よく会社の事を申し〇〇様のおうわさ致して居りました


こんなに早く逝ってしまうとは夢にも思ってゐませんでした


もう一度元気になって二人で幸せな余生を送りたいと頑張ってゐましたが本当に残念でございます


早や 四十九日忌をすませ本当にさびしくぽっかりと穴があいた様な気がします


常々体が思う様にならず はがいがってゐましたが 風邪をひき肺炎になり入院 二ヶ月の闘病生活でした


必ずよくなり退院出来ると信じてゐましたのに主人もどんなにか残念だと思います

最期は皆に見とられ苦しまずに安らかな往生でした


本当にありがとうございました


いつも主人に話しかけてはいろいろと思い出してゐます


息子嫁達がよくしてくれ主人も安心してゐると思います


御礼がおそくなりまして申しわけございません


かわいいお子様もお三人いらっしゃってお幸せのご様子 心よりおよろこび申し上げます お健やかに立派に成長されます様お祈り申し上げます


くれぐれも御身お大切に御自愛遊ばされます様お祈り申し上げます


乱筆乱文にて失礼致します


合掌

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