お名残が惜しまれます (お悔やみ状)

会社でお世話になった方が退職されると年賀状だけのやりとりになってしまいます。すると、年末に届く喪中葉書でびっくりする事があります。

この方は特に親身になってご指導頂いた上司でした。まだ60歳代という若さで亡くなっています。

すぐにお悔やみの手紙と『御供え』をお送りしました。

お悔やみ文には句読点は使わない、という決まり事があるとは、当時の私は思いもしませんでしたし、最近までついぞ知りませんでした。

これまで何度、葬儀に出席し『御会葬御礼』や香典返しの『御挨拶』の書状を受け取ったかしれません。それでも気付かない私です。

しっかり『、』『。』を書き込んでいます。


………

前略

この度は本当に思いもかけぬ〇〇様ご逝去のお知らせに、ただ驚き入るばかりでございます。

深く哀悼の意を捧げます。


退職なさってからは、年に一度年賀状だけのご挨拶で長らくご無沙汰し失礼していました。毎年お元気そうなご様子のお年賀状を頂戴していましたので、てっきりお健やかにお過ごしの事と思っておりました。


それだけに長い間臥せっておいでだったのか急逝されたのか、頂戴した本年のお年賀状を拝見しながら思うのでございます。


夫は〇〇様の部下として働いていた頃を思い出し「僕は上司に恵まれた。つらい時はいつも力づけられた。お陰で今の自分があるんだ。思えば、懐の深い度量の大きい方だった」と葉書を見つめて申します。


その温顔とご人格は社員一同敬慕してやまぬ存在でいらっしゃいました。


まだ早い訃報に接しますとは、返すがえすお名残が惜しまれてなりません。

折に触れ ことにつけてお淋しさひとしおのことかと存じますが、どうぞくれぐれも奥様御身お大切にお過ごし下さいますようお祈り申し上げます。


なお、心ばかりの御供えを同封致しました。遅ればせながらご仏前にお手向け下さいますようお願い申し上げます。

謹んでご冥福をお祈り申し上げます。

合掌

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