1章

学校に向かういつもの道の途中、生ぬるい風が顔にかかった。そういえば梅雨入りしたな。またこの時期か。この時期が好きだという人はいるのか。

そんな事を考えていると、嫌な風がまた顔にかかった。

夏になりそうで、でも夏にはなりきらない、けれども風はとっくに春風なんかじゃない。それに雨上がりの地面からの独特のムンムンとした何かが乗ってくる。

風を受けながら顔をより一層しかめた。

「翔、機嫌わるい?」

「別に」

そっけない返事にしかめっ面を返すこの女の子は、白谷 雪。

雪とは幼馴染のようなものだ。出会った頃からほとんど一緒にいる気がする。そこまでほとんどではないか。まあ数少ない人との関わりの中で、一番近くにいると思う。

ふと雪を見ると、整った横顔がいつもと変わらないと感じた。雪の肌は白くて綺麗だし、目はパッチリではないが、柔らかくて優しい目をしている。涙袋にあるほくろがより似合っている。まあ、美人だ。クラスでも人気らしい。

たまに、こんな美人が僕と一緒にいる事を不思議に思う事がある。何人かに告白されたような話しもしていたが、断ったらしい。なんでそんな話しを僕にわざわざするのか。分からないとかいうどっかのラブコメ主人公とは違ってなんとなくは分かる。だが自分から聞くのは勿論、

自分の気持ちを伝えるのも難しい。

「……」

「どうかした?」

「別に」

「また…」

近くに、いつものようにいるからこそ難しい。

そんなドラマのような言葉が浮かんだ自分がなんだか気持ち悪くなって考えるのをやめた。


学校に着き、見慣れた景色をすぎると、最近ようやく見慣れた2-1の教室が見えた。

「おせーよ翔。遅刻すんのか思ったわ」

「待ってたのかよ」

「待ってねーよ。キモい事言うな」

こいつは、小谷健。一年の時に委員会が一緒になり話すようになった。二年に上がって同じクラスになるとやけに絡んでくる。他に喋る奴がいないんだろう。まあ僕もそうだから助かっている部分もある。完全に上から目線だが、分かりやすく言うと、親友だ。

「てか今日も白谷と登校かよ。いいねいいねー。付き合ってるって噂だぜ?もう認めろよ」

「何回言わすんだよ。付き合ってねーよ」

「普通本人いる前でそうゆう事言う?」





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空の中の自分 @Gailu

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