第2話 スギモト(21歳 大学生)の場合

 激しいくしゃみのあと、鼻血が出た。毎度のことだ、アレルギーで腫れた鼻の中の粘膜が裂けたのだ。ティッシュを2・3枚引っ張り出し、鼻に突っ込み上を向く。くしゃみが続くと、息をする間もない。鼻血で白いTシャツを汚してしまうから本当は白を着たくないのだが、白いものばかり選んでしまう。すぐに洗えば、血は落ちる。スギモトは鼻にティッシュを突っ込んだまま、起用にTシャツを脱ぎ洗濯機に入れた。

 このアレルギーを除けば、体は健康だし何もしなくても運動が得意なのは親の遺伝だ。父は体育教師だ。この国で一番の体育大を主席で卒業し、教える立場になって、現在では学年主任をしている。そんな父はスギモトに運動を強要しなかったが、勉強には厳しかった。小学校3年生から中学受験のための塾に通わされ、県内一番の男子校に入学した。塾で学んだことは勉強の面白さと勉強の仕方だった。塾では毎月末にテストがあり、その成績順に壁に張り出された。意図的に闘争心を搔き立てられ、勉強に邁進する。おかげで、小学校6年からは、ずっと1位の成績だった。闘争本能がこれほどやる気を搔き立てる物なのか。人より理解できることの快感、優越感を感じたときに、アドレナリンが多量に分泌されていたのだろう。

 中学に入学したら、もっと頭のいい奴が沢山いた。中でも天才が居た。努力して頭が良いのではない、何もしなくても先生の話を一瞬で理解し、尚且つ授業の意図まで理解する奴が居た。スギモトは気に入らなかった。しかし、話してみるとその天才は屈託無く話したし、明るく人見知りが無いので、クラスの人気者だった。授業中も私語ばかりだった。しかし、テストでは学年トップだった。ますます気に入らなかった。

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アレル ユミオカミドリ @midori_yumioka

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