旧ドイツを思わせるディストピア世界、シュタージによく似た組織が出で来る恐ろしい世界観でありながら、どことなくノスタルジーを感じさせるのは癖のない文章のなせる業なのだろう。
そして、記憶喪失の少女メノンが記憶を取り戻すために不条理な目に合うというのはどことなくフランツ・カフカ的であり、ディストピア+不条理とくれば涎を垂らしてページをめくりたくなるビブリオたちも多いことだろう。
何が真実か分からない物語の中盤、話しが大きく転換したところで続きを待つ結果となるが、またしても読者は作者の掌で良いように煙に巻かれてしまうのだろうと思う。
それを心地よく思いつつ、物語の結末を見守ろうと思う。