『統一国家』2

第6話 統一国家の合理的判断による極刑

それは人を恐怖させる、心無き部屋だった。部屋は全て冷たく重い金属でできている。

そこで少年は鋼鉄の椅子に拘束されていた。

手首と足首には不可思議な合金でできた黒い手錠がかけられており、

どんなに力を入れても、手足を1ミリも動かすことはできなかった。


少年の周囲には四人ほどの大人の男がいた。

部屋が薄暗く、彼らの表情は見えない。しかし少年は確信していた。

『奴ら』は何の感情も抱いてはいないだろう……。


床下で低く唸る不気味な機械音が響き渡る。

少年は恐怖におびえ、涙を流した。

――――これから彼には『刑』が執行されるのだ。


「何故こんな事をされなきゃならないッ!?」


少年は周囲の大人達に向かって疑問をぶつけた。

その言葉に対し、周囲の大人達は穏やかに答えた。


それは君が罪を犯したからだよ。

『それ』はこの世界にとって、一番犯してはならない罪なんだ。


その言葉に納得できず、少年は暴れ出した。

しかし完璧に設計された金属椅子は揺れる事もないし、

抜け出すきっかけにすらならない。

大人達は小さくため息をつき、少年の罪を極めて冷静な口調で説明する。

しかし少年はまったく理解できない。理解できるはずがない。


『それ』の一体何が悪いと言うのか?


少年の叫びを無視し、大人達は刑の準備を進める。

冷徹な刃物に、氷の機械。

どれもこれも鋭く尖った残虐な形をしており、

これから少年の身に行われる刑罰の重さを示す。

少年は心の底から恐怖し、大声で叫びながら渾身の力で器具を剥がそうとする。

しかし最新最高の技術によって完璧に設計された手錠や椅子は、

少年がどれだけ努力しても決して解かれる事はない。

全ては無駄な努力だった。


大人達は少年に微笑み、優しく話しかける。


君は幸せな方だよ。

この罪は……罰せられない人の方が辛いからね。


がちゃりがちゃりと機械が動き出す。

少年の声にならない叫びが響き渡った。


30分後。刑が終了した。

少年は意外な事に生きていた。

しかし、少年の体重は軽くなっていた。

『20キロほど』




少年が犯した罪とは、『夢』を持つ事。

少年は自分の身に余る夢を見た。

自分の能力や才能を超えた、決して叶えられぬ夢。

それは効率を尊ぶ統一国家では、『特別な罰』が与えられる重罪なのだ。

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