優しい眼差しに包まれたおとぎ話

人も、エルフも、獣人も、龍も、ありとあらゆる生き物は死に向かって進んでいく。この物語には、避けがたい運命として常に死の予感が漂っている。生きる長さの違いは、そのまま価値観の違いだ。主人公の永遠とも言える寿命はあらゆるものを置き去りにしていく。恋人や妻さえもこの世から先に去って行く。そしてそれらは英雄的な死でもない。
それでもこの物語は決して後ろ向きな、絶望的な話ではない。あらゆる想いは世代を超え、種族を超え、受け継がれていく。それを虚しい繰り返しにしないため、少しづつ主人公は成長していく。読み手はそれを優しい眼差しで見守ることが出来る。