第049話「どさくさ紛れのカミングアウト」

緊張の面持ちの「戸塚マドカさん」が、…恐る恐る「シオン」の隣に座る、



シオン:「こっちくっ付き過ぎ、」

マドカ:「もちょっと詰めてよ、」


「シオン」のスマホの魚眼レンズを通して気付く、…「戸塚マドカさん」の、特別な眼差し、


やっぱりそうだ、…

それなのにどうして「シオン」はこんなにも「戸塚マドカさん」に素っ気ないのだろう?


お互いに「特別」な監視対象で有る事を認識しながら、二人の会話はまるでソレを気取られたくないかの様に、何時も否定的な意味合いで締めくくられる、…



アリア:「ああ!…これがツンデレですね!」


「シオン」が、行成りアペリティブを噴き零す!


私の声はイヤフォンを通した「シオン」にしか聞こえていない、…





マドカ:「何やってんの?」


然りげ無く、「戸塚マドカさん」が「シオン」にハンカチを渡す、…



シオン:「それはコッチの台詞だよ、…どうも昼間から何か可笑しいと思ったんだ、…新橋さんが仕組んだんでしょう、」


ホノカ:「うーん、まあね、…そんなに怒んないでよ、たまには良いでしょ、」


「ホノカさん」は苦笑いしながら、白ワインをチビリ、…



マドカ:「ごめん、私が、ホノカさんにお願いしたの、」

マドカ:「…シオンと会いたいって、」


途端に、「シオン」の血相が変わる、…

まるで恐ろしい物でも見たかの様な、必死の形相、



シオン:「もしかして何かあったの?」


「戸塚マドカさん」、俯いて溜息、…



マドカ:「はあ、…解ってたけど、本当にアンタって鈍いわね、」


何故だか「リョウコ」、…激しく同意、



マドカ:「違うって、何も無いけど、…」

マドカ:「つまんなかったの!…いっつもシオンはリョウコとホノカさんとばっかり遊んでさ、私は仲間外れでさ、」


シオン:「だってそれは、危険に巻き込まれない様にする為で、…それに戸塚さんだって、最近浜岡クン達と一緒に居る事が多いし、夏休みも一緒に旅行行くって、…」


マドカ:「ほんとアンタ、私の事何でも知ってるのね、…」


「戸塚マドカさん」、何だか微妙な笑顔、…



マドカ:「でもさぁ、一日中「会社の同僚」と外面モードで居るのって疲れるのよねぇ、…」


シオン:「いや、僕達も「会社の同僚」だよね、」


突然「リョーコ」が前菜のテリーヌをフォークで、…打っ刺す???





マドカ:「そりゃさ、私はリョウコやナギトみたいに身も心もシオンに捧げてるって訳じゃ無いわよ、…」


シオン:「一寸待って、今さらっと何か変な事言ったよね、」


マドカ:「でもさ、時々は私だってアホな話したいの、だらしない格好したいの、可愛い子ぶってる男の娘に意地悪したいの、そういうのアンタとしかできないじゃん、」


何故だか「ホノカさん」、…激しく同意、



シオン:「あの、どさくさに紛れて聞き捨てならない事カミングアウトするの止めてくれるかな、」


マドカ:「アンタ私の友達でしょ、違ったの?…どうして友達が一緒に居ちゃいけないの?」


それで、黙り込む「戸塚マドカさん」、…

今にも泣き出しそうな瞳は、目を逸らしたままの「シオン」を見詰め続けている、


やっぱりそうだ、…





アリア:「シオン、戸塚マドカさんは、シオンの事が「好き」なんです、」


シオン:「わかってる、…」


私の声はイヤフォンを通した「シオン」にしか聞こえていない、…



シオン:「僕も、戸塚さんと話できなくって、寂しかった、」


途端に、「戸塚マドカさん」の血相が変わる、…

頬を染めてうるうると、堪えきれなくなった涙が零れだす、



シオン:「でもさ、僕と一緒に居るのは危険だよ、やっぱり、」

マドカ:「なんでよ、リョウコだって一緒に居るじゃない、どうして私は駄目なのよ、」


シオン:「平塚さんは、元々、…狙われているから、」

シオン:「でも、戸塚さんは、僕達と離れていれば、危険な目に遭わないですむんだ、」


再び、黙り込む「戸塚マドカさん」、


どうしてだろう、…

その固く結んだ唇の意味を、彼女の脳内化学反応の正体を、途端に私は、…知りたくなってしまう、





ホノカ:「男の子はさ、自分だけが我慢すれば皆が幸せになれると思ってるんでしょ、」

ホノカ:「でもね、女の子はそうじゃないんだよ、」


「ホノカさん」は、ワイングラスのステムを指先で弄りながら、…



ホノカ:「悪いのは犯罪者の方、そんな奴等の為に大切な友達を無くすのは、悲しい事だと思うよ、」


それは、「国府津さん」のセリフにも被る、…



シオン:「でも、…」



シオン:「僕は、戸塚さんが酷い目に遭うのは、…絶対に厭だ!」

アリア:「私が、戸塚マドカさんを護ります、」


突然、何の前触れも無しに「シオン」のスマホが喋り出す、…


一同が、一斉に、それぞれに信じられない面持ちで「私」の声を、見る



マドカ:「なに、今の?」

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