第一話:入学式の朝
四月のとある日。
今日は高校の入学式である。
窓からは朝日が射し、
どうやら高校初日で少々緊張か興奮、もしくはその両方をしているらしく、目覚ましが来る前に目が覚めてしまったようだ。
ベッドの脇に置いていたスマホで時刻を確認するとまだ七時前だった。
この季節はまだ少し肌寒く、布団が恋しくなる季節でもある。
いつか誰だかが
つまりそういうことなのだ。
などとよく意味の分からない理論を考えながら再び布団にもぞもぞと潜ろうとしていると俺の部屋のドアが勢いよくバーンッ!と開いた。
「
我が家の目覚まし時計こと妹の
ちなみに妹、と言っても双子なので歳は変わらない。
故に妹も今日が高校の入学式である。
「おーう、起きてる起きてるー。そしていつも言ってるけどお前のドアの開け方激し過ぎだからな?大分ガタがきてんだから」
本当のことを言うとガタがきてるなんてもんじゃない、月に二回は修理している。
あいつには力加減ってものがないのだろうか。
「まあいいじゃん!細かいことは気にしない。それよりもほら、外は天気いいし、入学式だし、テンションも上がるってもんでしょ!」
テンションが高いのは割といつものことだし、俺の部屋のドアはもっと気遣ってもらいたいものなのだが、言ってもきっと意味がないだろうし、そこは黙っておくことにしておこう。
「先に下降りてろよ、着替えてくから」
「はーい!」
そうして琴音は弾むような足取りで階段を下りて行った。
当然、ドアは開けたままだった…。
「ったく…」
------------------
リビングのドアを開けるとテーブルに朝食が並んでいた。
今日の献立はザ・日本の朝食といった感じの焼き魚に味噌汁、漬物と白飯。
焼き魚のいい臭いが漂っていて食欲をそそられる。
我が家は朝食はできるだけそろって食べる派で、すでに卓には俺以外全員、つまり親父に母さん、そして双子の妹の琴音が席に着いていた。
「おはよ」
「音色早く!ごはんが冷めちゃうよ」
琴音はもう待ちきれないのか箸を持って足をぶらぶらさせていた。お前は子供か。
「悪い悪い、親父食べよ」
「ん」
我が家はドラマに影響されたのか初めからこうだったのかは知らないが、父さんが号令?をかけて食べ始めるスタイルだ。
「いただきます」
「「「いただきます」」」
つまりこういうこと。
「お父さんお母さんこの制服どう?可愛い?似合ってる?」
琴音が少しポーズをとりながら母さん達に聞いている。
口には早速ご飯粒を付けているので俺からすれば似合うかどうか以前の問題だと思うのだが…。
「最高に可愛いな。やはり俺の娘は世界一だ」
などと仰っている。
察しの通り俺の親父は重度の親バカである(妹に限り)。
「あらぁよく似合ってるわよ、もういつでもお嫁に出せちゃうわね」
「なにぃ?琴音は誰にもやらんぞぉ!」
「もうお父さんったらぁ」
わははうふふと、完全にテンプレの一コマ、我が家は今日も平和だ。
ちなみに今日に限らず大体毎日こんな感じの食卓である。
幸せな家族だなぁ、と思いました。
「でもほら、音色もいい感じじゃない?」
「めふっ」
突然話題を振られて軽くむせてしまった。
てか、音色もってことは自分が可愛いのは決定済みなのね…。
残念なことに妹の琴音は確かに可愛い。
というのも容姿は優れていると思うし、体型もきっと悪くないだろう。
そしてここからが重要なのだが俺らは双子の兄妹なのだ。
つまりある程度容姿が似ている訳であり妹の容姿が優れている以上俺も希望は持てると思うのだが…。
「あー、いんじゃん?」
親父適当!超適当じゃん!
や、いいんだけどさ。
「お父さんどこか褒めるとこあるでしょ、ほら…新品の制服とか」
お母さん、そういうことではないんじゃないかと僕は思いました。
「もう、お父さんもお母さんも適当過ぎだよ、よく似合ってるよ音色!」
おお、俺の妹がなんだかいつもより可愛く見えてくるような…。
「やっぱり可愛い私の兄なんだから!」
こともなかった。
「そうだな、琴音は世界一可愛いよ」
「音色棒読みし過ぎだからー」
「はいはい、んじゃっごちそうさん、もう時間だし出るから」
「あっ、待って早いよ!すぐ食べ終わるから!」
そう言って琴音はご飯をかき込みだした。
こうなってしまうと可愛さの欠片もないと思うのだが本人としては問題ではないのだろう。
そして瞬く間にご飯をたいらげた琴音はバタバタと出る支度を始めた。
「よしっ、音色行こうか!」
「あいよ、いってきます」
「いってきまーす!」
そうして俺たち二人は我が家を後にした。
家からは変な男に引っかかるんじゃないぞー!などと聞こえてくるような気がするが聞こえなかったことにしておこう。
夢と現で君とまた 花梨 ジャム @111ta96
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