夢と現で君とまた
花梨 ジャム
序幕:夢の終わり、現の始まり
突然だが俺は眠りが浅い。
そのせいかよく夢を見る。
あるときは勇者になり、あるときはゾンビに追われ、あるときはただ平坦な時間を過ごすだけ。
俺の見る夢と言えばいつもそのくらいのごくごく一般的な夢だったのだ。
だがあるときから、夢の中に共通点がでてくるようになった。
前述の通り夢の内容はいつもと変わりないのだが、決まってある人物が出てくるようになったのだ。
その人物は、黒髪で長髪、背は目線が少し下がる程度に低く、
夢の中に現実の身近な人物が出てくるなんてことはよくあることだとは思うのだが、俺はその女の子に少しも見覚えがなかった。
最初の内は、まあ夢の中に全く見知らぬ人物が出てくることぐらいたまにあってもおかしくないだろうと、そのくらいに思っていた。
しかし、見る夢見る夢に必ずその子が出てくるのだ。
10回連続で夢に出演してきた辺りから、さすがにこれは何かがおかしいのではないかと思い始めたが特に何かをするわけでもなかった。
なんといっても夢の中での話なのだ。
現実でどうにかできる訳でもなく、せいぜい夢占いで調べてみる程度しかしなかった。
夢の中で危害を加えられているのなら悪夢として何かしらの対処を。
何かいわくつきの物を知らず知らずのうちに手元に置いていたならばお
というより楽しくさえあった。
これは当然夢の中での話なのだが、彼女は
だから夢の中では互いに様々なことを話し、またいろんなことをして遊んだ。
この夢を見始めたのが中学三年の夏の終わり。
成績が思うように上がらず気落ちしていた頃だったからよく覚えている。
だがこの夢の時間の終わりは突然だった。
中学卒業と同時にぱったりと見なくなったのだ。
きっと高校受験に不安を感じていた自分に対する救済策のような、自己防衛本能のような、そんな感じのものだったのだろうと無理やりに納得させた。
とても寂しく気落ちもしたのだが同時に安堵もした。
安堵した理由が一つあった。
それは恋をしてしまったからだ、あろうことか夢の中の人物に。
夢の中の人物に恋をする。
自分でも馬鹿か、と思ったものだ。
しかし好きな気持ちはどうすることも出来なかったのだ。
だが幸いなことに何かアクションを起こしてしまう前にこうして少女は夢の中に現れることはなくなった。
きっとこれも一種の自己防衛本能だったのだろうと、そうやってまた納得させた。
そうして夢の中で少女と遊ぶこともなくなり、中学も卒業して春がやってきた。
そう、高校一年の春である。
出会いの季節でもあるし、何かを始めるにもいいきっかけになる季節だ。
ここからまた気持ちを切り替えて楽しい高校生活を送ろうと、入学式の朝の段階では本気で思っていたのだ。
だが結果として気持ちを切り換えることには失敗することとなる。
原因は今体育館の壇上で新入生代表のスピーチをしている少女にある。
「皆さんおはようございます。新入生代表の
どうやらあの子の名前は新山桜と言うらしい。
問題は容姿にあった。
黒髪で長髪、背は恐らく俺より少し低く、色白で
こうして、俺の夢か
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