終了フェイズ

神山詩織と??? ~神話創世RPGアマデウス

 あの神話災害クラーデの後、私達はすぐに例の大鏡を調べました。

『いいの、生徒会長? 勝手にこんなことして。一応学校の備品なんだけど』

 今にして思えば、その飯島さんの言葉は正論だったと思います。ですが、その時の私はそれを些細な事と割り切って、学校の許可を取らずに鏡を退け――

 そこからは大騒ぎでした。絶界アイランド内で見たのとほぼ同じ形の骸骨。すぐに警察がやって来て検証が始まりました。科学捜査から八年前の遺体であることが分かり、その時期に行方不明になった生徒であることが判明。当時担当だった先生が犯人として捕まるまで、一か月もかかりませんでした。

 その生徒の写真を見る機会があったのですが、

『ねえ。これって最後にドッペルゲンガーが変身した子だよね?』

 諏訪さんの言う通り、その姿は散り際に『鏡の中の自分自身ドッペルゲンガー』変身した生徒そっくりでした。

『……助けてくれて……ありがとう……』

 あの言葉は、ずっと閉じ込められていたあの生徒の言葉だったのかもしれません。


 犬井さんは気が付けばいなくなっていました。

『騒がしい犬っころがいなくなって清々したわ』

 と、飯島さんがわざとらしく大声で肩をすくめたのを覚えています。当たり前ですが、蔵星学園の中で彼女を見かけることはありませんでした。

 ですが元気な彼女のことです。どこかの空の下で、元気にジュースを飲んでいるんだと思います。

『うぃーっす、アテナっ子。またよろしくっす』

 いつかひょっこりそう言いながら現れそうな。そんな気がしてなりません。


 飯島さんは神話災害から三か月後に留学が決まりました。行先はイギリス。北欧諸国を回ってみるそうです。

『北欧神話系の神子アマデウスに会いに行きたいの。運命を司る三姉妹ノルニルの子とかに』

 折角『鮮血ラグナロクアマデウス02のルルブ』が出るんだから、と相変わらずわけのわからないことを言っていた。こういう時は深く追及せず適当に聞き流す。それぐらいの付き合いは覚えました。

『困ったことがあったらいつでも連絡して。お父様の力で助けるから』

 いろいろ開き直ったのか、遠慮がなくなったのか。飯島さんの父への愛はあの神話災害の後、加速していく一方でした。あんな笑顔で言われ惚気られると、何も言えないわよ。


 諏訪さんはあの後、本格的に引きこもりました。登校する日も減り、先生から私に説得するよう言われました。

 実の所、私は説得をするつもりはありません。彼女が学校を休んで何をしているかを知っているからです。

『ごめんねー、生徒会長! 神話災害でそっちに行けないの!』

 疎まれた力でも何かができる。親族に否定された力で事件を解決した諏訪さんは、神話災害解決に身を乗り出し始めました。絶界の中にはこちらと時間経過が違うものもあり、向こうの1日が現実世界の1か月ということもあるようで。

『卒業はするから見捨てないでねー。あと出席日数の計算してくれると嬉しいなー』

 とまあ、精力的なので止める気はありません。まったく、言えば神話災害の方も手伝ってあげるのに。

 追記ですが、スマホゲームは続けているようです。


 さて、私はと言うと――

「この力……これが神の力だというのか……」

「ええ。あなたは神の子。詳しい説明は後でするけど、その力が必要なの。悪しき怪物モンスターに人々が蹂躙され、物語のように殺されようとしている。それを止める為に」

 に向けて、私は言う。神話災害の最中に出会った新たな神子。この神話災害を解決するため、に手を伸ばす。

 私はあれから、アテナ様の元で神子のサポートを行っている。神話災害の防止を行いながら、新たな神の子を見つけてはその道を示す役割だ。

 そして今、に出会った。は私が差し出した手を握り返すだろうか、拒否するだろうか。それはの自由だ。

 

 戦いは一旦終わり、それでも未来は続いていく。

 様々な人が折り重なり、そして別れ行くことで形成される物語。

 未来と言う道を闇が閉ざすこともあるだろう。だがその闇を払う光もあるのだ。

 神なき世界において、その闇を払う神の力を持つ者。その名をアマデウス。

 はその力を――


 これは神話創世RPGしんわをつくるものがたり――

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

神子達の学園奮闘記 どくどく @dokudoku

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ