自己紹介
入学式を終え、早速クラスの振り分けを確認して見たところ、幸いなことに俺と早川は同じクラスに振り分けられていて、一緒に入学した友人の少ない俺にしてみればありがたいことこの上無いのだが、生憎と席はお互いにかなり離れた位置で、教室のど真ん中に位置どってしまった俺は否が応でも前後左右の人間との交友関係をできるだけ早めに深めなくてはならなそうだった。
ムードメーカー気質の早川は新しい友人作りも難なくこなしそうだが、あまり人と接するのが得意では無い俺はこのまま友人が1人もできないのでは無いかも入学前からヒヤヒヤさせられている。
もちろん早川は新しい友人ができても以前と変わりなく接してくれるだろうし、さりげなくフォローもしてくれるだろうが、早川についていってどこかのグループに入ろうとしてもドアウェーな雰囲気に縮こまってしまいそうなので、最悪の場合、一匹狼コースまっしぐらである。ただでさえ見た目が厳ついのだ、まずは自己紹介での第一印象が重要だろう。
そんなことを考えながら、教師が来て自己紹介が始まるまでの時間を使ってとなりの席の生徒ぐらいには声をかけてみようかなと思い、ちらりと右となりの席を見る。
座っていたのはメガネをかけた小柄な女子生徒で、入学初日だというのに一人で黙々と文庫本を読み、完全に自分の世界に入っているようだった。うつむいていることと、メガネをかけているせいで顔はよく見えないが、ともかくこれではいかんせん話しかけづらく、ましてやいきなり女子に声をかけるというのも俺にとってはハードルが高すぎたようで、早速新しい友人ができたのか、教室の片隅で楽しそうに話す早川を視界の隅に置き、ただぼうっと自己紹介が始まるのを待つほかなかった。
「うーっし、全員揃ってるかー」
と、それでは足元が見えなくなるのでは無いかと言いたくなるほど大量のプリントを抱えたガタイの良い男教師が1人教室に入ってきて教卓にプリントを置くなり自己紹介を始た。
柳田と名乗ったその教師は自分がこのクラスの担任であること、バレー部の顧問であること、この学校の購買で売っている焼きそばパンは絶品だから是非とも一度味わってみることなど一通り言いたいことを言い終わったのか一度教室の中を見渡してから左端最前列に座っている男子生徒を指名し、順番に自己紹介をするように指示をだした。
この日常を噛みしめて ヤカタリョウ @ryoyakata
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