第1章
登校
将来のことを考え、地元でもそこそこの進学校に進学した俺はまず最初に自分のタフで丈夫な体をくれた両親に感謝することとなった。
というのも、俺の進学した高校とそこに通う生徒の大多数が利用する駅との間には比較的緩やかめな坂がかなりの数あり、一つ一つは大したこととがないもののすべて乗り越えるとなるとそこそこ足腰に疲労がたまる程度の運動にはなるのだ。その上、どんな高校にも、進学校を名乗るからには生徒の学力を他の高校よりも生徒の学力を上げている工夫というものがあるのだが、うちの学校の場合それは朝授業だった。
ホームルームの前にある朝授業に間に合うためには始発の次の次当たりの電車に乗らなくては間に合わないし、ましてや運動部に所属していてる連中は朝練をするために始発で登校しているらしい。
ちなみにうちの高校ではどの部活も別に朝練を強制しているわけではないらしいのだが・・・・まったく、ご苦労なことである。
そんなことを考えながら気付けば校門まで来た俺がふと今来た道と反対側の道をみると、一人よく見知った男がこちらに歩いて来るのが目に留まった。向こうもこちらに気づいたようで、その中途半端なイケメンは大きく手を振りながらこちらに駆け寄ってきた。まったく、恥ずかしいやつだ。
「ようトシ!どうやら今年は当たりの年みたいだぜ!」
「何がだよ」
「周りを見渡してみな」
なんなんだニヤニヤと気持ちが悪い。と、思いつつも周りを見渡してみるが、これといって特別変わったことはなく、こいつが何を指して当たりだと言っているのか全くの見当もつかなかったので、返事の代わりに軽く首をかしげてやった。
「おいおいそんなに見渡してもまだわかんねえのか⁉︎それでも本当に男かよ⁉︎」
「あー、すまんな今のお前の言葉で余計わからなかくなったわ」
「ったく女子だよ!じょ・し!新入生も先輩も美人揃いだって同中の先輩が言ってたのはどうやら本当みたいだな!駅からここまで来る間に十人は見つけたぜ!」
「まあ、その美人がお前に振り向いてくれるかは別問題だけどな。てか、お前は登校初日からそんな話しか出来んのか」
「うっせえなあ。入学したての一年が盛り上がる話のネタって言ったらどんな可愛い子がいるかってのが相場なんだよ!」
初耳だな。だがまあ早川らしいといえば早川らしい。早川というのは目の前でニヤニヤとアホ面を晒している中途半端なイケメンの事で、トシとは早川が俺につけた愛称のようなものである。同じ中学校だったメンツの中でも特にお調子者だったこいつが広めたせいで、最近は本名で呼ばれることがほとんどなくなった。妹までがそう呼ぶ始末である。
「ま、とりあえず教室に行くか。クラスメイトに美少女がいるか早速確認しないとな!」
「意気込むのはお前の勝手だが初日から飛ばしすぎて周りから引かても知らんぞ」
こんな調子ではあるが、お互いに気心が知れた中ではあるので、自分にとっては大事な友人だ。
と、そんなことを考えながら、俺たち 二人は新しい学校生活への期待を少なからず胸に抱き、学び舎の門をくぐったのだった。
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