第28話 撮影決定 その4
「……なんだったんですかね。今の」
「さぁ?」
俺と黒沢は顔を見合わせ、互いに首を傾げる。吉田にしては珍しい慌てぶりだった。
そんなに、花子との会話内容を聞かれたくないのだろうか?
「あ、あの……」
「え? うおっ! な、なんだ……花子か」
不意に声をかけられ驚くと、背後にいたのは花子だった。
「あ……びっくりさせちゃってごめん」
「あ、ああ。別にいいぞ。で、なんだ? 何か撮影に関して聞きたいことがあったのか?」
「あ……ううん。その……吉田さんは?」
「え? 吉田? ああ、アイツなら帰ったぞ。なんだか様子が可笑しかったけどな」
俺がそういうと花子は何か言おうとしていたようだったが、そのまま黙ってしまった。
なんだか釈然としないが、用がないのならそろそろ帰るとしよう。
「まぁ、なんだ。吉田に何か言いたいことがあるのなら、また撮影の時に言えばいいんじゃないか?」
「あ……そ、そうだね」
「ああ。じゃあ、そろそろ帰るからな。またな」
「うん……その……その子はどうするの?」
「え? その子?」
花子がそういって指差す先には、気絶して白目を向いている黒沢がいた。
「コイツ……さっきの花子で驚いて気絶しやがったな」
「あ……だ、大丈夫なの?」
「ああ。殺したって死なないヤツだよ。コイツは。俺が部室まで連れて行くから気にするな。じゃあな」
「あ……うん。じゃあね」
俺は黒沢を担ぎ、そのままとりあえず校庭を横切って部室に向かうことにした。
黒沢を担いでいる間は、ホラー映画撮影をいよいよ開始しようというのに怨霊で驚いて気絶した後輩に対して、ホトホト呆れるしかなかったが、俺自身はすでに興奮していた。
ようやく、これで俺が求めていた映画が撮れるかもしれないのである。自然と頬が緩んできてしまう。
「よし……やるぞ!」
俺は校庭中に響き渡る声で、高々とそのやる気を示したのだった。
花子さんVS学校の怪談 ~聖彩学園映画部撮影記録~ 味噌わさび @NNMM
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