六日目⚫︎中編⚫︎

ウリーの話はぶっ飛んでいて、夏目は目を丸くさせてしまった。


「貴女を愛しています」


彼はまじまじと夏目を見つめながいったのだ。自分の過去と、夏目の母のことを伝えた上で夏目のことを愛していると言ったのだ。


「返事はいつでも構いません。私は夏目さまに全てを知っていただきたかった。私の知る全てを」


優しく手を握り、ウリーは愛おしそうに言った。夏目は頬を赤く染め、彼のことをジッと見ているだけで何も言わなかった。


「ウリーさん、私……」


「言わないでください。今は、まだ言わないでください。願いを叶えるときに聞かせて欲しい」


彼は逃げた。怖かったのだ。答えを聞いてしまうのが。しかし、それは夏目も同じだった。言ってしまえば終わるし、楽になる。だが、怖かった。自分が誰かを愛すのが。恐ろしかったのだ。


「ゼンのことは目をつむりましょう。さあ、もう日が暮れる。あの屋敷へ急ぎましょう」


夏目の手を優しく引っ張り、ウリーはゼンを近くへ呼んだ。


「ここから人魚の千羅さんが管理してる屋敷は道は知っていますか?」


「わかってます」


「それなら案内していただけませんか?」


「わかりました」


ゼンはコクリと頷くとゆっくりと歩き出す。


「あ、の…」


夏目は小さく声をあげた。彼女の視線は池の水面へと注がれている。


「どうかなさいましたか?」


「あれ…太陽の近くのあのまあるいやつ…」


ぴっ、と細くしなやかな指先で夏目は水面を指差した。そこには、太陽と並ぶようにして小さな惑星のようなものが見えた。


「もしかして、あそこに太陽の涙があるんじゃあないですか?」


「そんなまさか」


「あり得ない、とは言い切れませんよね?」


「……太陽、ですか」


三人はほぼ同時に上を見上げた。眩しく光る太陽の横に何かが並んでいるのが見える。水面に写っているのと同じものなんだろう。


「……レオンに頼んでみます。それで、あったら月のしずくも同じように月にあるってことですね」


「はい」


ウリーの言葉に夏目は瞳をキラキラと輝かせた。そんな二人の様子を見て、出会ったばかりだったがゼンは放っておけないな、と苦笑いをする。

その後、ゼンを連れて二人は自分たちの屋敷に戻った。千羅の管理している屋敷には行かなかったのだ。


「……ぶっ飛んでますね、その話。でも、ボクそういうの嫌いじゃないです」


太陽の近くにあるかもしれない、ということをレオンに伝えると彼はクツクツと喉を鳴らして笑い出した。


「フェイに頼んで見ます。彼ならきっといい宇宙船を用意してくれるでしょう」


「そう、それならよかったです。ね、夏目さま」


「はい」


「よかったですねぇ、お嬢」


「はい」


前からいたかのようにゼンはその場の空気に馴染み、夏目に馴れ馴れしく話しかけていた。それに気がついたのはロゼーター。いつも以上に眉間に皺を寄せ、不機嫌そうな態度でゼンを上から下へと、全身を舐め回すかのようにジロジロと見つめている。


「コイツ誰。狼くさいんだけど」


いかにも不機嫌だ!と言いたげな声色に夏目は苦笑いを浮かべる。


「ゼンさんです。仲間に、なってくださいました」


「仲間ァ!?どういうことよ、ナツメ!」


キーっと甲高い声で喚き始めるロゼーターに、夏目は思わず両の目を固く閉じた。


「まあまあ、落ち着いてください。この私でさえ許可したんですから、夏目さまを責めないであげてください」


「なんで許可なんかしたのよっ!」


「そこには深い事情があるんです。聞かないのがレディの気遣いってもんでしょう」


ウリーはやれやれと首を横に振ると、ロゼーターを見下すようにそういった。勿論、彼女はまたキーっと喚き声をあげた。


「あんたにレディの何がわかるのよ〜!!!」


がぶ、音を立ててロゼーターはウリーの細い足首に噛み付いた。


「何するんですか!!!」


当然のことながら、彼は甲高い悲鳴をあげて少し潤んだ瞳を彼女に向けた。


「ふんだっ!私の許可なく勝手に仲間にしたからよっ!!」


ロゼーターは腕を組み、鼻を鳴らしてそういった。それを見たゼンは彼女を嘲笑った。


「キャンキャン騒いでる奴がいると思ったら、この鼠か」


それを見たレオンはあーあ、と声を上げ、ウリーは額に手を当て首を振り、夏目は口元に手を当てわなわなと震えた。勿論、それはロゼーターの怒りに触れてしまったということに気がついたからだ。まあ、ゼンもあえてそれをやったのだが。


「あ、あんたねェ〜!!!」


小さな身体をわなわなと震わせ、ゼンの左足の脛へ思いっきり噛み付く。思っていたよりも痛かったのか、ゼンは痛い!と大きな声で叫ぶとロゼーターの首根っこを摘み上げる。


「この、くそ鼠めっ!!!」


「ふん、レディに対しての口の聞き方がなってないわね!ナツメ、こんな奴仲間にする意味ないわよ!!」


キーッと甲高い声を上げ、ロゼーターは夏目に言いより始める。それを見兼ねたのか、ウリーがパンッと一回両の手のひらを合わせ叩いた。


「はいはい、喧嘩はそこまで。文句は受け付けません、夏目さまが決めたことなんですから」


「だから、文句じゃあなくて私は助言をしてあげようと……っ!」


「貴女が言ってるのは文句です。ゼンも売られた喧嘩を買わないでください」


大人気ないですよ、と一言添えればゼンもロゼーターも顔を歪め始めた。そして、互いの顔を見合わせると嫌そうに見つめ合ってから顔を左右へと逸らす。それを見ていたレオンはゲラゲラとお腹を抱えながら笑い、夏目は二人の顔色を伺う。


「夏目さん、フェイに頼んでみたところ大丈夫だそうです。明日…いえ、今夜行きましょうか」


ニコリ、と可愛らしい笑顔を浮かべレオンは簡単に言ってしまった。夏目はあんぐりと口を大きく開き、レオンを見つける。


「今夜九時に出ます、後二時間ですね。その間に支度をしてください」


そう言い残して彼は支度があると言って、屋敷を後にしてしまった。残された夏目たちは顔を見合わせてから、すぐに各々の部屋へ向かう。

ゼンは夏目の部屋に来ていた。ピッタリと側について離れないのだ。ウリーは何か言いたげだったが、夏目がなにも言わないので口を閉じるしかなかった。


「お嬢、何を持っていくんです?」


「今まで集めたものだけ、です。それ以外は多分、必要がなくなるから…」


「お嬢は選ばれしもの、なんですね。必要がなくなるってことは、明日が最終日ってことか……」


「ウリーさんから聞いたんですか…?」


「えぇ、軽く説明受けました。自分だけが何も知らないでいるのは居心地が悪いですしね」


ふあ、と大きな口を開きあくびをするゼンは夏目に比べてとても落ち着いていた。


「お嬢は怖いですかい?それとも…」


「怖いです、怖くて怖くて仕方ないんです…」


ゼンの言葉を遮り夏目は震える身体を自分自身で抱きしめた。


「私は選べない…きっと選べません」


「選ぶって…生きるか死ぬかですか?」


「はい…。私は死にたくありません、まだたくさんやりたいこともあります。でも、ここに大切なものができてしまいました……どっちも捨てられません」


誰がこの少女にこんな苦肉の決断をさせようとしたのだろうか?まだ夏目は十五歳だ。精神的にもまだ未熟で幼すぎる。選べるはずがない。向こうの世界にはもう両親はいないが祖母や友人がいる。だが、こっちには家族はいないがそれ以上の存在となっているものたちがいる。彼女の小さな胸は張り裂けてしまいそうなほど締め付けられていた。


「お嬢、俺には貴女の気持ちはよくわかりません。俺はここで生まれて育ってきたから、この世界しか知らない」


ゼンは優しい声色で話しかける。夏目は彼の言葉に耳を傾けた。


「それを考えると俺がこうしたらいいとか言えるもんじゃないっスけど、俺はお嬢にはここにいて欲しいと思う。会って少ししかたってないけど、アンタはすごく優しい人だ、ずっと側で見ていたいんだ」


照れたように頬を掻き、ゼンはそう言った。カタカタと震えていた身体はいつの間にか震えてなくて、夏目は大きな瞳から大粒の涙をこぼしていた。白い頬に何粒の雫が伝い、床へ落ちる。


「…私、選んでもいいんですか?ここに、いたいって選んでもいいんですか…?」


「お嬢がいたいなら選んでください。俺は拒みませんし、他の誰かが何か言うのなら、俺がそいつをボッコボコにしてやりますよ」


そっと小さな手を優しく包み込み、ゼンは笑った。夏目は押さえ込んでいたものを吐き出すように声をあげて泣いた。こうやって泣いたのは久しぶりかもしれない。両親が亡くなったと聞いても泣けなかった、心の奥で何となく理解できていたから。

扉の外でウリーは夏目の気持ちを聞いていた。胸が張り裂けてしまいそうだった。彼女がここを選んでくれる、それが嬉しくて嬉しくてたまらなかった。それと同時に彼を罪悪感が襲う。自分のせいで彼女に彼女がいるべき世界を捨てさせてしまったのではないのか?そう、思えば思うほど彼はいてもたってもいられなかった。今すぐ彼女の元へ行って話したい、本当の気持ちをいってくれと……でも彼はそれができなかった。足が震え、進むことを拒む。何もできない、あの時の自分と同じだ…彼は苦しくてたまらず逃げ出した。


「ウリー、いいわけ?逃げ出して」


「…っロ、ロゼーター」


「知ってるわよ、あんたの本当の過去もね。…あんた、ナツメに嘘を話したわね」


「……貴女にはっ、関係のないことです…!今まで傍観者を続けていた、貴女には関係がない!」


「そうね、私は今まであんたたちに起きること全部見てたわ、だからこそ今言うのよ!」


ロゼーターは目つきを鋭くさせながら、ウリーに詰め寄る。彼女は小さな身体をしてはいるが、迫力が威勢が大きな身体をしているウリーよりも何倍も強かった。そんな彼女を見てウリーはうっと言葉を詰まらす。


「ここで逃げたらあんたまた同じことを繰り返すのよ!?それでもいいわけ!?」


「いいはずがないでしょうッ!!」


「なら…ッ!」


「いいはずがないから、私は……ここで逃げるんです。逃げるしかないんです…」


「あ、あんたねぇ…ッ!!」


ウリーの言葉にロゼーターは顔を真っ赤に染め上げた。そして思いっきり彼の細い足首に噛みつく。それは今まで以上の痛みで、彼の白い肌をロゼーターの牙は突き抜けていた。彼女が唇を離せばウリーの足首からは鮮やかな鮮血があふれる。


「私、このままだとあんたのこと本当に一生許さないから…ッ」


吐き出すように呟かれたその言葉。それはウリーの胸に深く突き刺さっていた。薔薇の棘が指に突き刺さった時よりも、深く根強く突き刺さっていた。ロゼーターは涙目で彼を睨みつけるとさっさとその場を立ち去ってしまう。取り残されたウリーは静かに自身の左胸を押さえた。

二時間というものは長いようで案外短いものである。支度をして、少し一息入れただけでその時間はあっという間に来てしまった。レオンがフェイに頼んで用意したという宇宙船は夏目が知っているようなものと全く姿形が似ていた。


「さて、これに乗って太陽の方に行きますよ」


レオンはにこりと笑いながらそう言った。


「太陽ってすごく熱いんですよね…溶けたりしちゃわないですか…?」


「あぁ、それは大丈夫ですよ。夏目さんの世界とボクたちの世界の太陽は全く違いますから」


形は似ていますけどね、と苦笑交じりに答える。それに対して夏目は瞳を大きくさせながら、感嘆の声をあげる。そんな彼女の反応が不思議だったのだろうか、ゼンも別の意味で瞳を大きくさせていた。


「…それで、そこの二人は何があったんです?まさか喧嘩なんてしていませんよね?」


圧をかけるような言い方だった。レオンは優しげな笑みを崩さずにお互いに背を向け合っているウリーとロゼッタに尋ねた。しかし、二人とも答えない。ピクリとも反応を示さないのだ。流石の夏目もどうしたらいいのかわからないようで、ウリーに何があったんですかとは尋ねない。


「……喧嘩をするのは構いませんが、時と場所を考えてください。もう、夏目さんには時間がないんですよ?六日目なのはお二人だってわかっているでしょう」


普段ふざけているレオンさえ今、仲間内でもめ合っている暇はないとわかっている。いや、二人ともそれはわかっているのだろう。残された時間が限られていることも。わかっているが二人とも譲れないのだ。譲ることができない。


「ここで何かを言っていても始まりませんね。夏目さん、ゼンさん乗ってください。そこの二人も」


ゼンが先に乗り、宇宙船の中から夏目に向かって手を差し出す。夏目はそれをそっと取ると、自身も宇宙船の中に入っていった。

宇宙船の中は思っていたよりも過ごしやすかった。ふかふかのソファに、ふわふわの毛布、それにあたたかいミルク。揺れもそんなに激しくなく非常に過ごしやすかった。あまりの心地良さに眠ってしまった夏目に毛布を掛けながらゼンは柔らかく笑んだ。


「さて、そろそろ話してくれてもいいでしょう」


コトンとマグコップをテーブルの上に置きながらレオンが言った。彼は帽子越しにウリーとロゼーターを睨みつけていた。


「あんただって知ってるでしょ」


「何を?」


「何をって…わかってるくせに」


重たそうに唇を開いたのはロゼーターだった。


「アヤコのことよ。あんた仲良かったでしょ」


「えぇ、勿論」


「それならわかるでしょ。どうして私たちが…」


「その姿になったか?それとも……夏目さんが”呪われしもの”だってことですか?」


レオンの言葉に思わずゼンがはぁ?と声を荒げる。そして、彼の胸ぐらを掴み、上へと持ち上げた。額を突き合わせ、レオンを睨みつける。


「お嬢が何だって!?」


「言葉の通りですよ。夏目さんは呪われしものです。存在がこの世界に、彼女の世界に毒なんですよ」


酷く冷ややかな声だった。


「その綾子ってのはお嬢の母親だろ?それが何の関係があるんだっ!」


「夏目さんの存在はこの世界では異物。気づけないのは当然だよ、白うさぎさんが後ろで操っているんだから」


パァン、と乾いた音がした。レオンがテーブルの上に転がる。上に置いてあったものは全て床に派手な音を立てて転がっていった。転んだはずみでレオンの帽子も床に落ちてしまっていた。


「痛いなあ…何も叩くことないじゃないですか」


叩かれた箇所を押さえながらレオンはゼンを鋭く睨みつける。帽子がないせいでレオンの顔がはっきりとゼンには見える。

一つに束ねられた亜麻色の髪に、透き通るような蒼眼、雪のように白い滑らかな肌、ほんのりと色づいた薄い唇、あまりにも美しすぎるその容姿。同性でもつい見惚れてしまうほどの美しさだった。ただ一つ気になると言えば浮いてしまうほどの深い漆黒の瞳、真ん中には十字架の模様がはっきりと浮き出ていた…。


「お前、その、瞳…」


こくりとゼンが喉を鳴らした。それを居心地が悪そうに顔を顰めながら、レオンは見上げている。


「だから、嫌だったんです。折角、帽子を被って帽子屋って身分を偽ったのに」


「赤の女王の、側近の…」


金魚のようにぱくぱくと口を動かす。


「リュロウド、伯爵…」


レオンは実につまらなさそうにゼンのことを見つめていた。

レオンことリュロウドはこの世界を収める赤の女王の第一の側近である。残酷、冷徹、冷酷、彼のことをこの世界のものに尋ねればその答えが真っ先に返ってくるだろう。次に死刑が好きな男であると皆口を揃えて言うだろう。リュロウドの印象はそんなものだった。当の本人はそんな言葉を特に気にするような人物ではなかった。


「なんで、赤の女王の側近がここにいるんだよ…」


大きく目を見開き、ゼンは声を高める。よく聞いてみると彼の声の震えが痛々しいほど伝わってきた。


「ボクがここにいる理由なんて、一つしかないでしょう?」


悲しげに目を伏せながらレオンはゆっくりと言葉を紡いでいく。


「そんなの…」


伏せていた瞳がゆっくりとゼンを捕らえる。


「夏目さんのことが好きだからですよ」


そう言ってレオンは笑った。それとほぼ同時に宇宙船は強い衝撃を食らい、操縦が不可能となってしまった。ビーっとけたたましく鳴り響く警報音。ふわりとした感覚と共に宇宙船は真っ逆さまに下へ落ちていったのだった。

大きな物音を立てて、宇宙船は太陽へとたどり着いた。

パラレルワールドでの太陽は丸い機体である。それは人工的な光に満ち溢れている。この世界に太陽なんて存在しなくとも、世界は回っていくのだ。


「来たのはいいですけど……着陸させたかったのは、隣なんですよねえ」


この距離なら宇宙船なしでも行けないことはないけど、とレオンは呟いた。彼のその言葉に夏目は顔を顰めた。そんな夏目の様子を上目遣いで見ていたロゼーターがゆっくりと口を開く。


「ひとまず、太陽の方でも探してみる?もしかしたら向こうにはなくて、こっちにあるかもしれないじゃない」


「ロゼーターの言う通りですね、折角こちらにも来たんですから探すだけ探してみるべきです」


ロゼーターの言葉にウリーも同意し、さらにはゼンまでもがそうしましょうと一言。


「残されている時間は少ないわ。悩んでいる暇があるなら手足を動かすべきよ」


「そ、うですね……ロゼーターさんの言う通り、です。探しましょう」


こくりと夏目が小さく頷いた。

集団で探していても意味がないと言うことで、五人は二手に分かれて探すことにした。夏目とゼン、それにウリーの三人と、レオンとロゼーターの二人である。


「さて…手掛かりになりそうなものは何かないっスかね」


「それを探すのが私たちの役目でしょう」


「まあ、それはそうなんですけど…」


ゼンを先頭に、その後ろを夏目とウリーが歩いていたのだが、ふと彼の視線が夏目へと向けられた。自分よりも低い位置にある顔を覗き込めば、真っ青に顔を染めた夏目がふらふらと歩いているのが見えるではないか。ギョッとしたように少し吊り上がった瞳をまるくさせた。


「お嬢、どうかしました!?顔色が…」


彼の言葉に隣を歩いていたウリーも驚いた顔をした。慌てたように夏目の小さな背中に手を当て、大丈夫か、何処か具合が悪いのかを尋ねた。


「…っだ、大丈夫、です」


「そんな風には見えないけど…」


「す、こし…少しだけ、くらくらする、んです」


足が地面についてるのかも分からないくらいくらくらする。と、夏目は力なく呟く。


「……もしかして、お嬢へのタイムリミットが近づいてきてるんじゃ…」


ゼンの言葉にウリーがこくりと喉を鳴らした。心配そうに夏目を横目で見た後、彼は溜息を溢すように答える。


「それは…あり得ますね。明日が期限である七日目…日付が変わるまで後二時間半しかありませんから」


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Blue Moon 七妥李茶 @ENOKI01

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