アニューマル・ワールド

有華視点


こんなの初めてやった。

ヌーの大群がいたところに転がってた変な生き物を見て、不思議と一緒にいたいと思った。


うちは女豹。産まれた時は群れがいた。

だけど、全員が他の群れとに縄張りを争う抗争で死んだ。

生き残ったのはうちだけやった。

今でも覚えてる。

血に染まった地面、他の豹人たちのギラギラとした狡猾な目、引きちぎられる家族や友達の体。すべてが恐ろしくて、でも、恐怖よりにくしみのほうが勝った。

いつか必ず復讐してやる。

その一心で、うちはこれまで生きてきた。

孤独なんて感じなかった………はずだった。あいつが現れるまで。


うちはヌーを狩りに行く途中だった。

ふと、草原のど真ん中で眠っている彼女を見つけた。

「なんや………?」

怪我を調べてみても、ヌーに蹴られた形跡も無ければ、獣に噛まれた形跡もない。

ほっとこう。関わらない方がいい。

そう思って離れようとしたのに、なぜか足が動かなかった。

なんで……足が動かへん。

体が本能に動かされて、勝手に彼女を背負う。柔らかい彼女の触感が懐かしい気がした。

一緒にいたい…

なんでこんなこと思ったのか分からへんけど、それがまるでうちの使命みたいな衝動に駆られた。


目が覚めた時、彼女はよくわからない事をずっと口走っとった。

でも、その横顔がどこか惹きつけられて、うちは目をそらすことができなかった。

守りたい。

まるで群れのメンバーと一緒にいるみたいや。うちはこいつを守りたい。頼ってほしい。

群れが全滅して初めて、そう思うものに出会った。

だから………嫌われたと思った時、とても怖かった。

また独りになってしまう。

たった数時間しか一緒にいなかったのに、独りになるのが恐ろしく思えた。


イヤだ。

独りにしないで……


「あんたもうちを捨てるんやな。」 こんな事が言いたかったわけじゃないのに、うちはそう言ってしまっていた。


だけど、まさか「一緒にいたい」なんて言われるとは思ってなかった。


「一緒にいて……いいんか?」

「うん。」 彩佳は優しい笑顔でそう言ってくれた。

「…………しゃあないな、うちが守ったるよ。」

「ふふ。任せたよ〜」

ホンマ、不思議な奴や。でも……嬉しい。

絶対に、こいつはうちが死ぬまで守ったる。

うちは口の中に残った血をぺッと地面に吐き飛ばして、口の周りをもう一度手の甲でぬぐった。

「さあ、行くで!」





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弱肉強食 @Nyamoshi

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