あなたの隣で
深雪まゆ
SS 読み切り
色とりどりの美しい薔薇の
「歌ってくれないのか?」
背後から温かく大きな背中がナリアを覆う。胸の前で合わさった腕に指先を触れさせた。
「ルシエン、起きたのね。私の歌は目覚ましじゃないのよ?」
「知っているよ」
そう言いながら、彼はナリアの腰まである長い髪を掻き分け、首筋に唇を押し当ててきた。やわらかな感触にビクンと体を震わせるが、もっとして欲しくて頭を傾げ首筋を露わにする。
「朝から誘っているのか?」
「んっ……どうして?」
ルシエンの手が布の上からナリアの先端を見つけ出した。薄い布越しに触れられ、そこはすぐに硬くなる。
「だって、君のここはこんなにして僕を誘っているだろう?」
「そんな……ぁっ、んっ……だめよ。今日はラード国王に呼ばれているのでしょう?」
「そうだね。でも、朝から美しすぎる君が悪いんだ」
そんなどうしようもなことを言われつつも、ナリアの体は高まってしまう。このままでは本当にルシエンはナリアを寝台へ引き戻してしまうかもしれない。
「ずっと君の傍にいたいよ」
ナリアは上腿を反転させルシエンの胸に体を納める。自分よりも背が高く体つきの大きいルシエンが、強く抱きしめると折れてしまいそうな華奢で細い腰を引き寄せてきた。
妻として娶られたナリアは この公爵邸で生活を始めてそろそろ一ヶ月だ。毎夜ルシエンから甘く愛をささやかれ、隣にいることを認められた。それがうれしくて仕方がないのに、幸せすぎて怖い。
(こんな風に思うなんて、贅沢だわ)
ルシエンの腕の中でそんなことを考えていると、彼が小さくてかわいらしい顎を掬い上げる。
「僕がこうして傍にいるのに、君は上の空なのか? それはとても寂しいよ」
「ルシエン、違うわ。幸せすぎて怖いの。こんなに……やさしくて頼もしいあなたに愛されて、本当に……怖いくらいなの」
大きなスミレ色の瞳で見上げれば、情熱的なルシエンの視線とぶつかった。金で縁取られた大きな瞳がルシエンを映す。
「怖くなんかない。僕が君を守るから。どんなことがあってもね」
「……ええ。ありがとう」
甘い口付けを施され、ナリアはルシエンの蜜を注がれる。 ちゅ……と淫らな音が清々しい朝の光の中に響く。何度か短いキスを唇に受けていたが、名残惜しげに離れて行く。頬を紅潮させながら彼を見上げ、もっと欲しいと訴えるようにその瞳を見つめた。
「もう一度、君が欲しくなったよ」
ルシエンに手を引かれ、それに抗うことなくナリアは歩き出す。そして 甘い囁きは再び寝台の上で紡がれる。
【END】
あなたの隣で 深雪まゆ @mayu_m
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