②決して消えぬ業火

 何時かの時代、何処かの国。

此処では今まさに、時代が変わろうとしていた。


視界が一気に真っ暗になっていく。

 今まで積み上げてきたものが、音を立てて惨めにも崩れ落ちていく瞬間だった。たった一瞬の油断、されどその一瞬の油断のせいで。

よもや此処で裏切りに合うなど、考えてもいなかった。其れさえ無ければ、奴らは彼女の圧倒的な力の前になす術も無く皆殺しだったのだ。

 屈強な肉体を誇る男に二人がかりで連行され、それから十分もしない内に投獄された。最早動く気力はない。殺がれた。手に嵌められた輪を外そうと試みても、貧弱な彼女の力では如何ともし難かった。

気紛れにふと触ってみた鉄格子がひんやりと冷たい。彼女は自身が置かれた状況を顧み、自虐的に笑った――が。


「……どうだ、お得意の魔法が使えない気分は? 処刑は、明日の正午に執行される。……これは天罰だ」


 隊員の一人が蔑むような眼差しと共に吐き捨てるように発したその台詞は、彼女の復讐心をごうごうと燃え上がらせ、そして増幅させるのには十分過ぎた。

 ――天罰だと?

 笑わせるな。思い上がるなよ、小者風情が。

 限界まで力強く握られた拳。皮膚に爪が食い込んで、血が滲み、そっと滴る。床には重力に従って垂れた雫が跡を残していた。

 どうせ誰も助けには来ないだろう。看守も見張っている。ここに来れば間違い無く捕まり、自分と一緒に処刑されるだろうから。絶望のみが取り巻く状況下で、彼女は心に固く誓った。

 ――必ず、必ずだ。

 私を 殺すこの世に復讐を果たし、奈落や地獄の底よりも深い絶望に陥れてやる。

そして、今度こそ。今度こそ私は世界を統べる王となる。

 そう、誓った。


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