僕らの心を、絆という名の魔法で。

寺田黄粉。

①胎動

 いったいここは、どこなのだ。


 見渡す限り、そこはどこもかしこも闇、真黒。光など一寸も差し込んでこない、この空間。


 そして、こんな陰気臭く、そして不気味でしか無い場所で目覚めた自分という存在は、いったい何だというのだろうか。


 ──暗い。出たい。光が欲しい。出せ。


 心に押し寄せるのは虚無感、そして静寂。ここにいる自分を慰めてくれるものなど、一つとして存在していない。


 そんな状態を嘲笑と囁きが突き破り、耳を侵してくる。それは、まさしく洗脳といえるものだった。言葉が、心を蹂躙する。


 壊せ、お前が憎む何もかもを。お前には、その権利と力がある。誰も拒否はできないさ。気に食わないのならお前が、望むように世界を変えてやればいい。


言葉が途切れると、先程迄は居るのが苦痛でしかなかった此の空間が酷く心地良い物だと思え始めた。何も見えない闇の中に居ることこそが、喜びなのだとさえも。

しかし、此処に生まれたことに対する絶望、憤りは消えてくれない。ふつふつと怒りが込み上げる。


力が満ちていくのがはっきりと分かる。そして其の理由も。有るのかも分からない天を見上げ、其れは呟いた。


──許さない、今に見ていろ。





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