第19話 彼女の手記 2
◇
やっと理解出来ました。
あの子達の言葉が。
どうやら彼らは――いや、彼ら、と言って良いのでしょうか。
彼らは、望まれて産まれてきた子供ではないのです。
信じられないのですが、彼らは捨てられた子供達だったのです。
総勢一二人。
全員、産まれたら、既にここにいた。
リーダー格の子、『ナオト』が、そう説明してくれました。彼は現在の最年長であり、多少は私の言語が判るそうです。先人に教えてもらったそうです。その先人は、今はいないそうですが……。
そして、そのことの次に彼が説明したことは、私には到底信じられないものでした。
まさか……堕胎児が、このゴミの中から産まれてくる、とは。
両親が医療関係の仕事をしているので多少知識はありますが、堕胎した子供は、その場で殺されるものです。しかし無認可の診療所などでは、そのままゴミとして出す場合が、残念ながらあるそうです。通常は酸素不足や、ゴミ処理場に着くまでに潰されるため生きていることなどはありえないのですが、彼らは全員、こうしてここにいる……ということだそうです。彼らが皆、一人残らず、普通の人間とは違う原因の第一要因はそれらしいです。
第一要因があるということは、第二要因もあるということです。
その第二要因とは、食糧です。
彼らはこのゴミ処理場の外には決して出ないそうです。私が彼らの姿を見つけたのは、彼らの内の一人が、何かに興味を引かれて思わず外に出てしまったからだそうで、過去に一度も起こったことはなかったため、油断していたから起きたことだそうです。あの一回以外で外に出たことない、ということになると当然、その場であるもので調達しなくてはなりません。幸いなことに水は、ゴミがフィルターの働きをして、雨水を、貯蓄出来るまで溜め込んでありました。これは先人達の知恵ではなく、自然になっていたそうです。
しかし、食物はそうはいきませんでした。
だから彼らは、周りから捜し出しました。
それはすなわち……ゴミ。
ゴミを食べていたのです。彼らは。
ゴミを食べ、生きてきた。
ここまで書いても、私には信じられないです。
水とゴミだけで、人間は生きていられるなんて。
人間というのは強い生き物である、ということを思い切り認識しました。
だけど。
それは本当なのでしょうか。
私はそれを……確かめてみようと思います。
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