第17話 彼女の手記 1

    ◇


 五月一二日



 どうしてここに来てしまったのでしょう。どうして、私は好奇心だけで、あの子達の後を追って行ってしまったのでしょう。いや、そもそも、どうして私は、ここに足を伸ばしたのでしょうか。まさに、魔が差したとしか言えません。

 それとも……これが、運命だったのでしょうか。

 私があの子達と出遭ったのは、全くの偶然でした。

 ここに来たのは、ただの散歩。散歩にしては距離が長いですが、それも何となくのことでした。私は篝家では『夢の島』的な存在であったのも、関係あったのかもしれません。

 そしてあの子達が外に出てきたのも、偶然だったそうです。まだあの子達が何を言っているのかは判りませんが、何となく、そういうような意味合いを持つ眼で、私を見ていました。

 あの子達には、あの子達の言語がありました。

 しかし、首を縦に振ると『YES』、横に振ると『NO』という意味であるということは共通でした。

 その反応で聞き出せたことは、それだけでした。

 明日までには、あの子達の言語を覚えようと思います。

 それまではどうしても、帰れません。

 帰りません。

 もう私は、人形ではないのですから。

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