第14話 人骨

 一面に広がる花畑を遮るように高々と聳える、白いものの集合。それはいびつな形をしており、中には明らかに、人の顔の形をしているものもあった。


「…………」


 僕は静かにその山に近付き、掌ほどの大きさのものを手に取る。


「……う」


 少しだけ吐き気がした。しかし判った。


「これは作り物じゃない……本物だよ」

「一八体だな」


 唐突に、骨のあった山の向こう側から韋宇が顔を出した。


「……何のことだ?」

「ここにある骨の持ち主の数。まぁ、頭蓋骨で数えただけだけどね。一八体ならちょうどこのぐらいの骨の量になると思うよ。でも……ちょっと骨が細すぎるな」


 韋宇は持っていた骨を投げ入れる。

 その言葉を聞いて、一つの仮説に辿り着く。


「一八って……もしかしてこれは、何かの事件の被害者なんじゃないか?」

「いや、そうじゃないと思うよ」


 美玖はそう言って、目の前にある頭蓋骨の一つを指差す。


「これを見てみろ」

「ん? ……え?」


 僕は思わず凝視してしまった。

 間違いない。

 その頭蓋骨には――



「眼の穴が……たった一つしかないじゃないか」



 その言葉に、美玖は大きく頷く。


「そう。まるで最初からなかったかのように、な」

「これもだ」


 そう言って、今度は韋宇が指を差す。


「これは肋骨だ。だけど、牙のように太いものが一つあるだけで。砕けたような跡もない。つまり、あった形跡がどこにもないんだ」

「ということは、これは……人間じゃ、ないのか……?」


 そう口にして置いて、僕は頭を振る。


「いや、眼が一つしかない生物なんているはずが……じゃあ、これは何なんだ……?」


 そう呟いた、その瞬間だった。





 答えを知る者、いや――

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