第30話 選択肢は二つ

 襲撃犯の目的は分からなかったが、その後は襲われることもなく僕は家路につくことが出来た。途中で付けられていないかを確認しながらだったので、だいぶ遅くはなったが。

 帰ってきて気が付いたが、僕の行動も相当おかしい。

 何故振り返らなかった。

 何故警察に通報していない。

 色々と抜けている。

 だけど、それで正しかったのかもしれない。

 あれはただの幻想。

 妄想。

 その可能性もある。

 だから警察に告げたら心の病気として捉えられるかもしれない。

 いや、それはあながち間違いではないのだ。

 僕は二重人格なのだから。

 そういう精神的な診断を受けると僕は確実に黒になる。


「……ふう」


 一息つき、思考を揺り戻して結論付ける。


「……先程あった出来事は、なかったことにしよう」


 導き出した答えは、逃げの一手だった。

 余計なことはしない。

 警察にも言わない。

 当然、美玖にも秘密にする。

 今は混乱させることを言う必要はないだろう。


「そうなれば……」


 先の推理の方向性は間違っていない可能性が高い。

 ただ、先の襲撃者がそれとリンクするかは不明だ。

 だけど、次に狙われる可能性が高いのは、僕か。

 もしくは――


「……」


 次の選択肢は二つだ。

 いや、厳密に言うと一つだ。

 ルートが二つあると言った方が正しい。


「よし」


 僕は携帯電話を取り出し、とある人物に電話を掛けた

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