第25話 部室
◆
翌日。
二限目から授業だったのだが、家に居ても相も変わらずもやもやとするだけだったので、早めに学校に行くことにした。学校には『KATID』の部屋もある。そこに何があるかといえば何もないのだが、それでも新たな発想はあるかもしれないという空気はある、と妄想にも近い幻想を抱きながら僕は向かう。
大学の最寄り駅に着き、大学行きのバスへ乗ろうとした所で、後ろから肩を叩かれた。
美玖だった。
「あれ? 今日の授業は二限目からじゃないんたっけ?」
「そうだけど、なんかもやもやしてさ。部室に行けば何かひらめくかな、って思って」
「部じゃないけどな。ま、あたしと同じ理由ってことか」
美玖もどうやら自室で頭を悩ませていても仕様がないと思ったようだ。名探偵の思考と被ったなんて嬉しく思う場面ではないけれど、同じ考えを持つ人間がいて少しほっとしたような、変な感じになった。
「……なあ、あれからなんかあったか?」
バスを降りてサークル塔に向かう間に、美玖が訊いてくる。
警察からの連絡は以前の事件の流れから、基本僕に来ることになっている。
「いいや。来ていたら全部美玖にも伝えているよ。あれから新しい情報は無し」
「そっか……あの目戸の事件の方も?」
「うん。あっちも」
死亡推定時刻とか他の人のアリバイとか色々情報はあるのだろうが、そちらも連絡はない。
「部屋に着いたらまず訊くとこからしてみる?」
「その方がいいかもね」
美玖が頷いたところで『KATID』の看板がある部屋の前に辿り着く。
「まずは情報の整理から行うわよ。そこから徹底的に考える。これが今できること」
鍵を取り出して部屋に差し込み、捻る。
「……あれ?」
「どうした?」
「変ね……もう開いている……」
「開いている?」
この部屋の鍵は、大学にマスター鍵があるかもしれないが、それを除外すると今は美玖と僕、そして韋宇の三人しか持っていない。
「鍵を閉め忘れた、ってことはないわよね?」
「今までそんなことはないから、その可能性は低いと思うけど」
「だったら……」
その鍵が開いているということは――
期待を込めていたのだろう、美玖が勢いよく扉を開ける。
「……っ!」
僕も美玖も、言葉を失った。
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