第21話 捜索
「そうなるだろうね」
思わず息を呑みそうになる前に、美玖がそう言葉を落とす。
「状況的に一番怪しいのは韋宇だ。凶器もコテージで見つかっている訳だからね」
「でも」
「分かっている。それってかなり怪しい。凶器なんて自分のコテージに置く必要はないし、そこらへんに捨てていいはずだ。それにあいつがノコギリなんか持参していないことはあたし達がよく分かっている。――だけど、警察としてはそう見解を出さずにはいられないんでしょう?」
「その通りだ」
首肯する飛鳥警部補。
「私も彼が犯人ではないとは思っているが、あくまで個人的な意見でしかない。しかし、だからこそ彼を一刻も早く発見し、無実を証明したいとも考えている」
「あたしもその意図は組んでいますよ。だから」
美玖が頭を下げる。
「どのような理由で行方をくらませているかは判りませんが、韋宇を見つけてください」
「僕からもお願いします」
僕も頭を下げる。
飛鳥警部補は呆気に取られたように一瞬呆けたが、
「……任されたよ」
すぐに力強く頷く。
韋宇。
こんなに心配掛けやがって、どんな理由でその場を離れたんだ?
何で僕と美玖に連絡をしない?
何でメッセージを残さない?
怒りがふつふつと湧き起こる。
だから、あいつが見つかった時に全部言ってやる。
文句を全部ぶつけて、全部説明させてやる。
それまで僕は諦めない。
諦めてやるものか。
「……あ、そうだ」
飛鳥警部補が思い出したかのように手を打つ。
「これから私は轟君の住家に聴取に行こうと考えているのだが、何分住所を調べるのに苦労するんだ。君達、もし知っていたら案内してもらえるかな?」
「韋宇の住家?」
……そういえば。
僕は気が付く。
あいつの住んでいる場所も駅も、そういえば知らない。
僕自身の家が遠かったってのもあったではあろうが、今まで聞いたことが無かったし、話にも上がらなかった。
「美玖知っている?」
「確かあいつの家は……」
携帯を取り出して何やら操作すると、
「ああ、あったあった。あいつ自分んちの住所登録してるわ」
「え? 携帯に電話とメールアドレス以外に登録があるの?」
「久羽……携帯本当に使ってないのね……」
呆れられてしまった。
それよりも、だ。
「あるなら一緒に行こうよ」
「そうしよう。――刑事さん、お願いできますか?」
「分かった。じゃあ一緒に来て」
飛鳥警部補の後ろに僕達は付いていく。
こうして僕達は韋宇の住家に向かうこととなった。
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