'umikūmālima、ウミクーマーリマ。ハワイの言葉で10と5の意味。

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 小説を読み終わった。悲しい話だった。今までのようにストーリーに集中出来なくて、想像の世界に入り込めなかった。一段落ずつ読んでは本を置いて、FMを聴いたり、ベタの水槽や植物を眺めた。

 たくさんのディスカスに囲まれて作業した午後の感覚が残っていたせいか、今夜は一気に読み進めた。でも感情移入が出来なかった。その小説の主人公みたいに強く愛する人がいないから。

 愛する人、と思い、慧くんのことが浮かんだ。

 本当に彼女がいないのか。あの指輪は何だろう。結婚していたことがあるのだろうか。

 私はいつからか指輪を外していた。どこに仕舞ったのか良く覚えていなかった。慧くんのことを知りたいと思うけれど、私は離婚の原因や瑠夏の父親のことを知られたくない。慧くんも知られたくないことがあるかもしれない。

 カイの水槽のウォーターマッシュルームを眺めていて、LINEしてみようと思った。何を送るか考えていると慧くんからメッセージが届いた。


kei> 魚の仕事を手伝ってくれないかな。出来る日だけでいいから、考えてみて


 Anuenueは横長の三階建のビルのテナントの一つで、隣はドッグサロン、二階はリフレクソロジーのサロン、多分海が見える三階はヨガスタジオになっている。Anuenueの上の二階三階は慧くんたちの住居で、建物のオーナーは父親だそうだ。

 元々、慧くんの父親は藤沢でバイク屋を営んでいたが店を畳んで、今の場所にテナントのビルを建てた。父親が観賞魚の配送などを担当していたのだが、腰を痛めていて、手術のため一ヶ月間入院するらしい。退院後は引退するのでスタッフを募集するそうだ。


ai> 近々行くから、話を聞かせて


 まだ働く自信はないけれど。ディスカスのガレージが、私の居場所になったらいいのに。

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