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憂鬱感と不安感。更に虚無感と疲労感。薬がないと駄目だとは思いたくない、が、四回目の診察でまた薬の量が増え、薬代が高くなった。睡眠導入剤を飲んでも一時間ごとに目が覚めた。それは薬が二倍になってもあまり改善されなかった。
雨の道を歩きながら何も考えたくなくて、頭の中で一歩一歩ニャーニャーニャーニャー数えた。そんなにたくさんいらない。私は多くのものを望み過ぎて傷ついた。部屋で酒が飲めればいい。もし波の音が聴こえたら音楽すらいらないだろう。ただ、そんな自分には一体どうしたらなれるのか……!
頭の中でニャーニャーニャーニャー繰り返す自分を気持ち悪いと思いながら、それでも止めれずに歩き続けた。
歩く道の両側には、大きな三階建の家。広い庭。ガレージ。素敵な植栽。どうしてそれを維持出来るのだろう。私の父は会社を失った。一戸建を失った。SUVを、家族を、愛猫を。どうして何も失わずにずっとその家に住み、家族と暮らし、子供を転校させることはなく、可愛いペットとはいつでも波打ち際で過ごせ、好きな車を運転出来るのだろう。それとも、それを維持出来ない父や私が出来損ないなのだろうか。
三階建の家も大きい車もいらない。子供と魚たちと植物たち。歩いて行ける距離の海。そして酒が飲めれば、それだけでいいのに。ああ、何て贅沢なんだニャー。
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