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庭のビオトープの六匹のヒカリメダカのうち、三匹が丸々と太っていた。湘くんの実家のメダカたちは産卵したらしい。太ったメダカの腹には卵が入っているのだろうか。ビオトープの鉢を運んでくれた湘くんは、メダカの餌を置いて行かなかった。室内のアフリカンランプアイと同じ餌をあげていたからだ。メダカたちは藻などを食べて生き延びているようだった。可愛かったウォーターバコパは一年草で、去年の冬に全部枯れてしまった。今日こそペットショップに行かなくては。
ペットショプ。特に魚を主に扱っている店に行くのは、水族館に行くよりも魅力的だ。綺麗な水草や、その店の店長がレイアウトした素晴らしいアクアリウムを見ることが出来た。でも全ての店が素晴らしいというわけではない。私は横浜のペットショップに行く事にした。デートの帰りには必ずと言っていい程寄っていた、或いはそのペットショップに行くのがメインだった、店。以前は湘くんの車で行っていた。公共交通機関での行き方を調べると、二回乗り換えれば店の近くのバス停に行けそうだった。
初めて降りた駅を出て、ペットショップ方面のバス乗り場を三十分近く探した挙句バスに乗り、疲れ果ててペットショップに歩き着いた。不思議だった。湘くんが運転して来て駐車場にヒールを降ろさなくても。娘が入り口のスーパーボールのガチャを欲しがらなくても。私はここに居て店の中に入っていく。
とあるブランドの、洗練されたフォルムのライティング。CO2システム。カウンター、拡散面。CO2システムは職人が作る精巧なガラス細工だった。水槽そのもの、アクアタンク。水草、魚。店長が作っているアクアリウムを堪能してから店員に声をかけた。繁殖用のメダカの餌を出してもらい、繁殖の仕方を聞いた。アパートの庭のビオトープにはヨーロピアンクローバーが茂っている。メダカの雌は腹に卵を産んでから、ホテイアオイなどの根がふさふさした植物に卵を擦り付けるらしい。ヨーロピアンクローバーの根はソイルの下で、細い茎が水面に伸び四つ葉を広げている。メダカが卵を擦り付けるのには向いていない。私はメダカの餌とホテイアオイを一つ買って帰った。
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